食事をとっているのに痩せてきた


Dさんは、60代の男性の患者さん。若い頃から仕事に一直線でした。仕事が多忙で、健康診断はほとんど受けたことがなく、最近まで体調も悪くなかったため、健康診断の必要性も感じられなかったとのこと。

しかし、最近になって食事をとっているのにもかかわらず、痩せてきてしまい、また便にも血が混じるようになったため、病院を受診しました。

私は医師として嫌な予感がしました。食事がとれているのに体重が減るというのはあまり良いサインではありません。意図しない体重減少の3割ぐらいまでが、がんが原因であることを知っていたからです。

もちろん、お酒が原因だったり、甲状腺の病気が原因だったりと、体重減少の原因は様々にあるので、そうとは決めつけず、丁寧に問診を始めました。

「体調がいい=病気がない」は間違い!65歳以上の8割に慢性疾患がある【医師・山田悠史】_img0
 

すると、どうやらお酒などの問診でわかるような原因はないようでした。

続けて診察をしてみると、手のまわりの筋肉や額の筋肉が痩せ細っているのがわかりました。血圧が高く、収縮期血圧は160mmHgほどありました。

 

血液検査をすると貧血があり、また時に悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロール値や糖尿病を示唆するHbA1cの値も高いことがわかりました。

ほんの1時間ほどの問診や診察、検査で、「体調が悪くなかった」「病気のなかった」人に高血圧、脂質異常症、糖尿病、貧血の4つの病気が見つかりました。