「文通費」は用途を聞かれることもなく、税金もかからないお金


この「文通費」にはさらに根深い問題があります。ここで「昭和22年」に制定された国会法と歳費法(通称)を見てみましょう。

国会法第38条 
議員は、公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため、別に定めるところ(注→歳費法)により手当(注→文通費)を受ける。

そしてこちらが歳費法(正式名称:国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律)の該当部分。

第9条第1項 各議院の議長、副議長及び議員は、公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため、文書通信交通滞在費として、月額百万円を受ける。
第9条第2項 前項の文書通信交通滞在費については、その支給を受ける金額を標準として、租税その他の公課を課することができない。

国会議員のお給料は「歳費」と呼ばれるもので、一般のサラリーマンと同じように前もって所得税が引かれて支給されます。「文書交通費」は、例えば「住宅手当」とか「通勤交通手当」みたいな感じでしょうか。サラリーマンの場合、通勤交通費は150,000円を超えると所得扱い、住宅手当はすべて所得扱いで全額課税です。ところが「文通費」はここに書かれているように100万円全額非課税で、必要な人も必要でない人にもポンともらえる事前渡し切り。きっちり100万円使いきったかどうかの確認もできません。というのも実際に何にいくら使ったか、全然報告しなくていいから。領収書も全く必要なし。端的に説明すると「要不要に関わらず支給されて、何に使ったか聞かれることも、税金もかからないお金」。ええとそれって、私の感覚では……お小遣い?

 

歳費にこの文通費、ボーナスみたいな期末手当が約600万円と、政党からの手当が出て、議員の年収はざっと4400万円。そのほかにもJR乗り放題をはじめとする様々な特権があります。もちろんお金だってかかるんでしょう。それはかまわないけど、原資は税金なんだからその明細をきっちり出すのは筋じゃないか。私たち一般市民は、税金とは無関係なお金をもらっているのに、何にいくら使ったか、領収書や帳簿を求められます。なぜかと言えば、国が取るべき税金をとりっぱぐれないためです。そうやって取られた税金を、いくら政治家だからって白紙小切手みたいに渡しちゃうなんて、まったくもって納得がいきません。

 


「領収証が出せないものもある」とは?


こういう時に「手続きが煩雑になる」みたいなことを、厚顔無恥に、ぬけぬけという政治家がいますが、そういうこというなら究極的にワケわからん「インボイス制度」を即刻中止しろと言いたい。フリーランスや零細企業(小規模ゆえに消費税を免税される事業者)を対象に消費税を取るこの新しい制度は、団結して反対されにくい人たちを狙い撃ちにした制度に他ならない上に、今の社会状況で一番痛手を被っている人たちをさらに苦境に追いやるもの。本当にややこしいので詳細は省きますが、この制度に登録し消費税(売り上げの約1割)の課税事業者にならないと、企業が仕事の発注しにくくなる仕組みなのです。ウーバーの配達員とか、マジで生きていけません。複雑怪奇な手続きをして今まで以上に税金ふんだくられ、結局食っていけないって、いったいなんの罰ゲーム? 「お小遣い」の明細を報告するくらいでグダグダ言うことが、どんだけ特権的なことか。

前述のニュース番組では「日割り計算」にはすっきり賛成しても、領収書に関してはきわめて歯切れの悪いものでした。「領収証が出せないものもある」とか言ってる議員に、私は問いたい。「文書通信交通滞在費」という範疇で「領収証が出せない場合」って、どういうシチュエーション? さらにある議員は「等」を逆手にとって「飲食に使っても問題ない」とかもはや小学生レベルの言いっぷり。自分の政治団体に寄付して別の用途に流用している政党もあるようですが、それって金の出所を見えにくくするためにマフィアがやる「マネーロンダリング」に似てる気さえするんですが。

日本の議員の年収は前述の通り4000万円超。日本より一般の給与水準がずっと高い欧米でも、議員の報酬はこの半分にも至りません。報酬が高くなければ議員になる人がいなくなる、という説は一理ありますが、これだけ高いと、逆に政治に興味なく収入目当てで政治家を目指す人もいそうな気が、しなくもありません。


写真/shutterstock


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