65歳以上の5割は慢性疾患が二つ以上
病気の中には、うまく早期発見するのが難しいものもあります。しかし、大腸がんは必ずしもそうではありません。早期発見の方法がしっかりと確立され、早い段階で見つければ根治できるがんもあります。
あるいは、糖尿病や高血圧も、発症初期には症状を出しにくい病気です。また、早く見つけてしっかりと治療をすれば、体調にあまり大きな異常をきたすことなく、残りの人生を過ごせる可能性が高い病気でもあります。
しかし、未治療でそのままにしてしまうと、後に脳梗塞や心筋梗塞といった重い病気につながり、後遺症を残したり、若くして命を落としたりすることにもつながりかねない病気です。
また、年齢とともに、このような病気は重なりがちです。40代ではまだ高血圧だけであった人でも、60歳になると、糖尿病、心臓の病気、腎臓の病気も患い、薬がたくさん必要になったというケースも稀ではありません。
複数の病気を防ぐためにできることはないのか。あるいは仮に多くの病気を持った場合に、どのようにうまく付き合っていけば良いのか。治療や検査を賢く受けるにはどうすれば良いか。
このように多様な疾患を抱え、多様な社会的ニーズがある状況を“Multicomplexity”といいます。米国からの報告では、65歳以上の8割の人に少なくとも一つ以上の慢性疾患が、5割の人に二つ以上の慢性疾患があるとされています(参考文献1)。
日本でも、高血圧や糖尿病の患者はそれぞれ約1000万人に上ると報告されています(参考文献2)。こうした数値から考えても、65歳を迎えて慢性疾患を複数抱えることは決して珍しいことではありません。
また、病気の話だけではなく、加齢とともに起こる様々な体や心の不調により、社会的なサポートを必要とすることも多くなります。体が不自由になり介護をする人が必要になったり、リハビリの専門職の助けが必要になったり、あるいは自宅環境の調整のためにソーシャルワーカーの助けが必要になったりといった具合です。
若い頃にはなんとなく「他人事」だった病気も、知らぬ間に全く他人事ではなくなる時がくることがあります。しかし、多くの病気には、確立された予防法や治療法があり、うまく付き合っていくことができます。
また、適材適所で社会の助けを借りることも重要になってきます。加齢とともに起こりやすい病気や社会的ニーズを知り、その対策について考えておくことが大切なのです。
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参考文献
1 Ubjective S, Ognitive C, Ecline D. Aggragated 2015-2018 Subjective Cognitive Decline. 2015.
2 高血圧の総患者数は993万7,000人 平成29年(2017)「患者調査の概況」より | 生活習慣病の調査・統計 | 一般社団法人 日本生活習慣病予防協会. (accessed Dec 2, 2021).
写真/shutterstock
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