エンタメ業界で活躍するライター6名が、2021年に公開・放送・配信(海外作品は2021年日本公開)された作品から「個人的ベスト5」を選出。まだビミョーに遠出はしにくい今年の年末年始。家で過ごす時間は、気になっていたあの作品のイッキ見に費やしてはいかが?
本稿では、2021年に公開されたエンタメ作品から、5作(※映画×1、GP帯ドラマ×2、深夜ドラマ×1、恋愛リアリティーショー×1)をピックアップ! 良作が多くて、絞るのにかなり難航しました……。時間をかけて考えた、選りすぐりの5作です。
坂元裕二の凄さを再確認
【映画】『花束みたいな恋をした』(U-NEXTで配信中)
“最近観た映画で1番好きな作品”を、1月からずっとキープしていたのが、『花束みたいな恋をした』でした。終電を逃したことをきっかけに出会った麦(菅田将暉)と絹(有村架純)。2人が過ごした“20代最高の5年間”を、日記のように振り返る物語。
この映画、ちょっぴり“イタい”んです。サブカルチャーが好きな麦と絹は、自分たちを特別な存在だと思っている。そんな2人をみていると、なんだか恥ずかしくなってきたり。でも、自分も20代前半の頃はこんな感じだったのかもな……と懐かしくなるんですよね。恋人と自分、2人きりの世界がすべてだと思っていたあの頃。その年代にしか出来ない恋愛を、坂元裕二さんが唯一無二の言葉で紡いでいきます。
そして、ただ楽しいだけで終わらないのが坂元作品のすごいところ。大人になると、背負うものが増えて、恋愛のことばかり考えていられなくなりますよね。そんな葛藤まで、丁寧に描いているんです。私は、この作品を“考察系恋愛ドラマ”だと思っていて。観終わったあと、「あの台詞はこういう意味だったのでは?」と考察を膨らませるのが楽しいです。観る前と観たあとでは、『花束みたいな恋をした』というタイトルの捉え方も変わってくるはず。その“変化”を楽しんでください。
長瀬智也×宮藤官九郎の集大成
【GP帯連ドラ】『俺の家の話』(Paraviで配信中)
2021年に放送された連続ドラマを語る上で、欠かせないのが『俺の家の話』(TBS系)。『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)から始まり、『タイガー&ドラゴン』(TBS系)や、『うぬぼれ刑事』(TBS系)など長瀬智也×宮藤官九郎のタッグは、数々の名作を生み出してきました。今年1月に放送した『俺の家の話』は、長瀬さん引退前最後の作品。名タッグのフィナーレにふさわしいドラマでした。
とくに、最終回の終わり方がすごかった。あのシーンを思い出すと、いまだに頭をガーンと叩かれるような衝撃が呼び起こされます。ピークを過ぎたプロレスラー・寿一(長瀬智也)が、能楽の人間国宝である父・寿三郎(西田敏行)の介護のために現役を引退。名家の長男として、家族とともに介護に奮闘していく物語……と聞いたら、最終回で寿三郎を看取るのだろうなと思いますよね。でも、『俺の家の話』はそんな想像に容易い展開にはしない。言葉を失うほどのラストが待ち構えています。エンタメの面白さって、こういうことだよな……と改めて実感した作品でした。
新たな価値観を提示する令和らしい作品に
【GP帯連ドラ】『恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜』(Huluで配信中)
『ピュア』(フジテレビ系)や、『愛していると言ってくれ』(TBS系)、『ビューティフルライフ』(TBS系)などハンディキャップを主題にした作品は、これまでも多くの人々の心を動かしてきました。今回ピックアップした『恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜』(日本テレビ系/以下、『恋です!』)も、弱視の女の子と不良少年の恋を描いた作品。
ただ、弱視のユキコ(杉咲花)だけでなく、森生(杉野遥亮)も生きづらさを抱えているんです。お互いに自分を“普通”ではないと思っているのが新しいなと感じました。森生の目には、家族仲が良くて、学校にもちゃんと通っているユキコは“普通”に映っている。真のバリアフリーとは、こういうことなのかもしれません。自分の“普通”を他者に押し付けるのではなく、相手の目線に立って、“普通”の価値観を共有していく。小学校や中学校の道徳の授業で流してもいいのでは? と思うほど、学びのあるラブコメディです。
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