自分の親がどうやら認知症かもしれない……。そんな時に頭をよぎるのが、進行が進む前に何をやっておけば良いのかという問題です。やっておくべきことは言い出したらキリがありませんが、今回は同じ職場に勤める陽子さんとめぐみさんが直面した「成年後見制度」について紹介します。

 


母親の成年後見人になったという先輩


陽子さんは、大手住宅メーカーに勤める40代後半の会社員。父親はアルツハイマー型認知症と診断されていますが、初期段階のため、多少は物忘れが進んだかなという程度でした。家族のことを忘れてしまう、季節がわからないといった状況ではないので、それほど深刻には考えていなかったのです。

会社の同僚の中にも、親の介護をする人が徐々に増えてきたなと感じていたある日。同じ部署の先輩・めぐみさんが、「母親の成年後見人になった」と話し始めました。めぐみ先輩の父親はすでに他界しており、母親の認知症は進行して家族もわからない状態になっていたのです。
 

銀行が全力でプッシュする成年後見制度


めぐみ先輩の母親は有料老人ホームに入居していましたが、施設に入居しているとはいえ、オムツなどの日用品費は月々かかり、実家の固定資産税などまとまった金額の振り込みもあります。これらは本来親のお金でまかないたいと考えていましたが、母親が認知症になった今、契約や財産の管理が難しいため、銀行に相談しました。すると銀行から「成年後見人をつけないと相続手続きが進められなくなる可能性もある」と言われたといいます。

その話を先輩から聞いた陽子さん。成年後見制度という制度についてぼんやりとしか知らず、そもそも認知症などで判断能力がなくなると成年後見人を立てる必要があるのか、自分もいずれは父親の成年後見人になることも考えないといけないのなど、いろいろと気になり始めました。

 
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