親は元気で、介護なんてまだまだ遠い先のこと。そう思っている方にこそ知っておいて欲しいのが、親の銀行口座からお金をおろす方法です。今回紹介する恵美さんは、いざという時に親のお金をおろすことができず、困り果てた1人です。
入院時の自己負担費用の平均は20.8万円
都内で暮らす恵美さんの母親は、持病の腰痛こそあるものの、まだまだ元気。年齢も67歳と若く、友人たちとの旅行や趣味を楽しみアクティブに過ごしていました。離婚して独り身ではありますが、介護なんて想像もつかないほど健康で、老後の話をするなんて野暮なもの。そんな母親の姿を見て、恵美さんは独身である自分の身を案じる方が先だと、親の健康もお金についても気にしたことはありませんでした。
ところがある日、「脇の下に気になるしこりがある」と恵美さんの元に連絡が入ります。乳がんかも!?と焦った恵美さんは母親と一緒に病院へ行き、腫れているリンパ節や腫瘤の一部を検査することに。すると白血球の中のリンパ球ががん化した、悪性リンパ腫ということが判明したのです。しかもステージⅣということで、入院を余儀なくされました。
結局母親は、抗がん剤治療を行うため、2ヶ月ほど入院することに。恵美さんは、とりあえず実家に置いてある現金20万円を入院費に充てて欲しいと預かります。入院時の自己負担費用の平均は20.8万円と言われていますが(生命保険文化センター「生活保障に関する調査」参照)、母親は「いざという時のための貯蓄はある」と言うので、20万以上かかった場合の費用については特に心配していませんでした。
あっという間に入院費用を使い果たした末に
ところが平均20万円の入院費用は、高額の差額ベッド代がかさむと話は別。あれよあれよという間に膨れ上がります。恵美さんの母親は、最初の3日間は大部屋が満床で個室に入らざるを得なかったため、1日2万円の追加料金を取られてしまいました。当然ほかにも食事代や日用品費がかかり、最初のひと月で預かったお金をすべて使ってしまったのです。
ちなみに入院中の医療費は退院日までに全額支払うのが原則ですが、入院が1ヵ月以上に及ぶ場合は、通常月ごとに請求書が発行されます。恵美さんの場合もひと月が過ぎた時点で請求が来たため、母親にお金の相談をすると……。
なんと! いざという時の資金を貯めていたという銀行のキャッシュカードの在り処を思い出せないというのです。
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