50代、カフェオーナーとして新しい人生のステージへ

 

50代に入り、娘も独立。このまま何もしないまま、生きていくのだろうか。将来への漠然とした不安にかられたチェリーさんは、カフェを始めようと思い立ちます。
「ドゥリエール」での裏方としての経験がベースにあったからでしょう。とはいえ経営に関してはまったくの素人。それでも不安はなかったといいます。
「能天気なのよ」
「これからの人生のために、絶対やったほうがいいよ」そう強く背中を押してくれたのは、他ならぬ別れた夫でした。

 

運も味方します。その頃には東京から神戸に拠点を移し、犬中心の生活を送っていたチェリーさん。ある日、愛犬・アドくんを散歩しがてら初めて歩いた道で、たまたま気になる建物を発見。中をのぞいてみると、どうやらクローズした店舗らしい。広い間口と、道路から階段で少し上がるアプローチも気に入り、その足で不動産屋に駆け込みます。ちょうど空くことが決まったばかりのその物件と、チェリーさんは運命のように出会ったのです。

2001年6月、芦屋にカフェ「ラ・スリーズ」オープン。54歳のときでした。

「店の名前は娘のアンナがつけてくれました。ロゴや店内のポスターやなんかのセレクトは、すべて夫によるもの。彼は『(ロゴを)何百回も書いたんだよ』と、珍しく言葉を尽くしていたわね。あまりくどくど言う人ではなかったけれど、私が『可愛いじゃない』って、ひと言で済ませちゃうものだから。ちゃんと言っておきたかったのね(笑)
この文字は、これからも私の心の中にずっとあるわね。アンナも息子のリアンに『これは、あなたのおじいちゃんが書いてくれたのよ』と伝えてくれています」