エンタメ業界で活躍するライター6名が、2021年に公開・放送・配信(海外作品は2021年日本公開)された作品から「個人的ベスト5」を選出。まだビミョーに遠出はしにくい今年の年末年始。家で過ごす時間は、気になっていたあの作品のイッキ見に費やしてはいかが?
映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』
(各種オンデマンドにて配信中)
脚本の出来が文句なし! 主人公は、医大生時代に起きたある事件で、人生を台無しにされてしまった、30歳の女性キャシー。事件の加害者たちがのうのうと“幸せ”や“成功”を手にしていることを知り、つかみかけていた自分の幸せを手放す覚悟で復讐を開始します。大学時代のクラスメート・ライアンとの再会から始まるロマンスパートのウィットに富んだ会話、復讐の方法のオリジナリティ、用意周到で予測不能で痛快なオチ。キャシーの知的でパワフルなキャラクターを見れば、脚本・監督のエメラルド・フェネルの才能とセンスを疑う余地はありません。
復讐劇とロマンティック・コメディという掛け合わせの妙、清楚で可憐なイメージだったキャリー・マリガンの新境地、そして男たちに復讐して終わるのではなく、“そういう男たち”がのさばる社会作りに加担した女たちにも復讐する視点など、いくつもの新しさを提示した、2021年を代表するMeToo映画。
映画『ビーチ・バム まじめに不真面目』
(各種オンデマンドにて配信中)
若い頃に1冊の詩集を発表しただけで、天才詩人と称賛されるムーンドッグが主人公。(おそらく)50手前の現在はフロリダのキーウエストで、資産家の妻のおかげで、遊びながらハッピーに暮らしています。酒、女、ドラッグに溺れるムーンドッグは、言葉が降りてきたらタイプライターを2本の人差し指でバチバチ叩いているけれど、新作を発表する気配は見当たらない。
簡単に言えば穀潰しのダメ人間なので、正直、彼のような人生を送りたいとはまったく思えませんが、世の中の価値観や評価に左右されず、自分の楽しみに忠実なそのスタイルには憧れずにはいられない。劇中でインタビューを受けるムーンドッグの、「楽しむのが好き。それが原動力だ」「人生は山あり谷あり。俺はとことん楽しみつくしてやる」という原始的だからこそ強い言葉は、このヘルな日本を生き延びるための合法ドラッグかも。それでもしんどいときは、それまでの努力が水泡に帰す大ハプニングをムーンドッグが笑い飛ばす、祝祭のようなラストシーンを思い出したい。
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