映画『サマーフィルムにのって』
(劇場公開中)
時代劇、高校生、タイムトラベルをミックスした青春映画の大傑作。映画部員で時代劇オタクのハダシは、凛太郎が未来からやってきた理由を聞き、映画を「作りたい」という気持ちが、「作らなければ」という使命に変わる。そして凛太郎を武士役に、仲間を集めて映画を作るザ・青春感と、ハダシと凛太郎のガール・ミーツ・ボーイという2本の主題が、映画を上映する文化祭で交差し、スパークするのです。
ハダシと凛太郎が、掃除道具を刀に見立てて決闘するクライマックスは、肉体的な接触のない愛の交換。2人が刀をクロスさせた瞬間を切り取った、過去、現在、未来がそこに共存するラストショットは、その残像がいつまでも脳裏から離れない完璧な構図。ハダシの「時代劇を好き」という気持ちを全身で表現した伊藤万理華は、風貌からして誰ともかぶらない唯一無二の魅力の持ち主。彼女が今年主演した、本作の松本壮史監督が脚本・演出で参加しているドラマ『お耳に合いましたら』も、関連作品としてぜひ。
連ドラ『夢中さ、きみに。』
(Hulu・TELASAで配信中)
原作は、『女の園の星』の和山まやの同名コミックス。近隣する2つの高校を舞台に、それぞれに自意識をこじらせている高校生たちの日常を、誰かを特別扱いするでもなく描く青春群像劇。ドラマオリジナルの架空の小説『鉄と鉄』を鍵に、喜安浩平(『桐島、部活やめるってよ』)が紡ぐ脚本を演出する、塚原あゆ子(『最愛』)のすべてを描ききらない省略の技が本作でも冴え渡る。
その最たるものが、主な登場人物がたまたま交差点に居合わせ、すぐにそれぞれの方向に散っていくラストシーン。そこには一瞬の青春と彼らの未来が共存しているのです。キャストには、なにわ男子の大西流星、高橋文哉、福本莉子、伊藤万理華ら、今後の日本のエンタメを支える若手が揃う。ちなみにこの「ドラマ特区」という枠は、放送中の『美しい彼』といい、TVerで少なくとも第1話だけでもチェックしたい注目枠。
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