妊活・不妊治療をしている方々の
親御さんは、“聞く”に徹して

 

産婦人科医をしていると、妊活や不妊治療をしている方の親御さんからの相談も少なくありません。娘さん、あるいは義理の娘さんがなかなか子供を授からないことに、親御さんも悩んでおられるのです。

ただ、その親心が、本人にとってはストレスになるということも知っておいていただきたいんです。
というのも、ほとんどの場合、お子さん夫婦は自分たちが子供をほしいという思いだけでなく、親御さんに孫の顔を見せてあげたいという思いも持っていて、それが叶わないと自分を責めてしまうからです。
しかもそれは自分の努力によって叶うことではありません。だから、つらくなるばかりなのです。

 

妊娠・出産が遅れるのは、社会全体の問題でもあります


かつて、「DINKS」=Double Income No Kids、つまり共働きで子供を持たない夫婦という言葉が流行った時代がありましたが、こういった選択肢もあるにもかかわらず、今の日本では、まだまだ〝子供を産むのは当たり前〟〝親に孫の顔を見せて一人前〟という風潮が根強く残っています。

親御さんたちの時代は、今の人たちより5年は早く子作りにトライをしていましたが、現代では20〜40代の女性は、社会での働き手としての役割も求められています。
現代女性が妊娠・出産が遅れるのはそういった社会全体の問題もあるので、妊活が遅くなってなかなか妊娠できないとしても、それは自分の娘や嫁だけの問題ではないのです。

 

それにも関わらず親御さんから、孫はまだかと思われることのつらさに、想像力を働かせてみていただければと思うのです。
たとえば、〝もう不妊治療を諦めようかなと思っている〟とお子さんが言ったとき、親御さんが〝本当はまだ諦め切れていないんじゃないかな〟と感じたとしても、それは、〝孫がほしい〟〝自分たちの子供に赤ちゃんができてほしい〟という親のエゴであり、当事者の思いではありません。

 
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