「やっぱり果物だけじゃ足りないや。なんか買ってくるから、先に教室行ってて」

午後の講義が始まる前に、一度ソユンと別れた。すぐにでもメールを打ちたい気持ちを抑えて、とりあえず学外へ。実際、お腹も満たされていなかった。

学食やカフェテリアはあるものの、気軽に買い物ができるコンビニなんて便利なものはない。お菓子の自販機はあっても割高で種類も少ないから、小腹が空いたときはいつも大学院の近くのスーパーやパン屋に足を延ばしている。

今回はスーパーで小ぶりのラップサンドを選び、レジに並ぶとスマホを取り出した。

〈サリュ! お誘いありがとう! ちょうど観たい映画があって〉――

候補映画を挙げながら、デートの妄想が止まらない。

 

たぶん映画の前後で一緒に夕食を取るだろうし、翌日は休みなんだから、きっと「泊まっていきなよ」っていう流れに……

でも……

――ギヨームは私のこと好きなのかな……私はギヨームを、本当に好きなのかな?

NEXT:1月24日(月)更新(毎週月・木・土更新です)

難解な授業とフランス語に苦戦する愛莉。外国人同士、お互いの国の言語を教え合うÉchange linguistique(エシャンジュ・ラングスティック)=言語交換の会に参加してみることにする。

私たち、付き合ってるのかな?_img0

<新刊紹介>
『燃える息』

パリュスあや子 ¥1705(税込)

彼は私を、彼女は僕を、止められないーー

傾き続ける世界で、必死に立っている。
なにかに依存するのは、生きている証だ。
――中江有里(女優・作家)

依存しているのか、依存させられているのか。
彼、彼女らは、明日の私たちかもしれない。
――三宅香帆(書評家)

現代人の約七割が、依存症!? 
盗り続けてしまう人、刺激臭が癖になる人、運動せずにはいられない人、鏡をよく見る人、緊張すると掻いてしまう人、スマホを手放せない人ーー抜けられない、やめられない。
人間の衝動を描いた新感覚の六篇。小説現代長編新人賞受賞後第一作!


撮影・文/パリュスあや子