マウスの研究結果をうのみにしない


断食は、健康・長寿を叶えるための方法論として一部の人に受け入れられています。その背景には、げっ歯類やヒト以外の霊長類で示された研究結果が色濃く存在しています。

すべての研究で一貫して同じ結果になっているというわけではありませんが、マウスなどを用いた一部の研究で、マウスにカロリー制限をするとより長寿になる傾向が見られたという報告があります(参考文献1)

摂取カロリーの制限によってエネルギー消費量が減少し、活性酸素の産生が減り、結果として酸化によるダメージが減るという理論が提唱されています。また、カロリーが制限されることで、インスリンの濃度やDNAの損傷にも減少がみられ、こうした変化がアンチエイジングにつながっているのかもしれないという観察結果も報告されています。

 

これらはあくまでマウスでの変化、あるいは人間の細胞レベルでの変化を捉えたものであり、実際に人間が長寿になるのかまではわかっていません(参考文献2)

 

マウスで証明されたことが、人間では全く逆の結果になってしまったということも稀ではありません。マウスでの発見も、細胞レベルでの発見も、後に人レベルでの大発見につながる可能性のある偉大な研究成果ですが、人の体というのは複雑で、それらの発見に基づく仮説が人レベルではまったく認められないということがよくあるのです。

冷静に考えてみれば、マウスと人間は姿・形からして全く異なる生き物ですから、マウスで起こったことが人間でも起こるとすぐに信じるのは無理があるというのはおわかりいただけると思います。

しかし、それでも大きな説得力を持ってしまうことがあるので、宣伝などに用いられることもありますが、そういった研究結果を見る場合はすぐに自分に当てはめようとしてしまう気持ちを抑える必要があります。

 
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