生きることの希望や愛おしさが伝わる本
自分の人生を考えるきっかけに
実は、私が彼女の名前を知ったのは3〜4年ほど前のことです。あの時、何が何でもナオさんを取材したかった……、と思っていました。ナオさんと直接お会いすることは叶わなかったけれど、彼女の活動を支えていた方から「ナオさんが遺した本がやっと完成したので読んでほしい」と、ナオさんの著書を贈っていただいたのです。
『がんをデザインする』(ニジノ絵本屋)は治療を続けながら、さまざまなことにチャレンジする、そのひとつひとつが丁寧に書かれている本です。ナオさんの前へ前へと進む行動力に圧倒され、読んでいて気持ちいいほど!
現在、ナオカケル株式会社の代表を務め、ナオさんの母親でもある加藤ゆう子さんが、この本について話してくれました。
「たくさんの方々に応援していただき、ようやく完成した本です。表紙のナオの画像はスタッフのみんなも気に入っている1枚なんですよ」(加藤さん)
「がんをデザインするなんてちょっと変わったタイトルですよね。がんにまつわるネガティブなイメージを変えられたら、もっと生きやすい世の中になっていくのでは? とナオが自分なりに考えて考えて作った言葉なんです。
ある日、東京・青山ブックセンターでこの本がデザインコーナーに置いてあるのを見た時は、本当に嬉しかったですね。病気や医療・ライフスタイルなどのセクションに置かれることが多い中、ナオがこだわった『デザイン』に寄り添ってくれている、と。あの時の感動は今でも忘れません」(加藤さん)。
この本の表紙、とても、素敵です。
自身がデザインした「N HEAD WEAR」の帽子と一緒の笑顔の画像とともに、本の装丁にも引き寄せられました。この本の版元、ニジノ絵本屋のいしいあやさんは、ナオさんのお姉さんになります。
「この本は特別なものしたかったんです。私たちらしい工夫ができないかと考え、いろいろな本の見本を参考にしました。トレーシングペーパーから見える画像が、映画のワンシーンのようにドラマチックに感じて『こんな感じでできるかな?』と、編集チームのアンドサタデーさんに相談しました。
表紙画像についてはナオや、ナオカケルのスタッフとも話して決めていたので、あとは重ねた時のイメージが合うかどうか。何度も確認したことを覚えています」(いしいさん)。
ナオさんは、がんという病気を通して「がんになっても大丈夫という社会を作りたい」と一歩ずつ前へ進み、彼女なりの解釈でデザインしてきました。ナオさんの著書には、想いやモノづくりのアイデア、細部のこだわりがたくさん紹介されています。
「あかるく、かるく、やわらかく」。
ナオさんがつくったこの言葉は「『deleteC』の一番大切なバリュー(価値観)になっている」と小国さん。
「みんなが眉間にしわを寄せて、肩に力を入れて、拳を振り上げて声をあげるのではなく、ふふふ、あはは、わっははと、みんなで笑いながら世界の風景を描き変えていけたらいいなと思っています」(小国さん)。
本を読み、ナオさんの近しい方から話を聞いたりしているうちに「自分の人生はどうなの?」と自問している自分がいました。今までの人生の中で何かに夢中になったり、極めたり、そういうことをしてきたかな? と。焦りとは違う、何かに突き動かされる感じ。「やりたい! 何かしたい!」という気持ちが生まれてきたのです。本当に不思議な本です。
次回は、中島ナオさんの思いが詰まった「がんをデザインした」作品を紹介します。
取材・文/長谷川真弓
構成/國見香
前回記事「だる重い体を賢くリセット! 「肩・背中・腸の不調を整えて痩せる」おすすめサロン」はこちら>>
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