「オミクロンの次」を生み出すリスク


しかしポジティブに捉えれば、私たちの手によって、このパンデミックを人類に有利な方向に導くことも可能だということもできます。なぜなら、それらの不確定要素に人類が影響を及ぼし続けているからです。

英国オクスフォード大学のKatzourakis教授はNature誌の中で、このように述べています(参考文献7)

「人類を有利な方向に導くために、多くのことを行うことができる。第一に、私たちは楽観主義を捨てなければならない。第二に、死亡、障害、疾病の起こりうるレベルについて現実的に考えなければならない。目標を甘く設定すれば、循環するウイルスが新たな変異ウイルスを生み出すリスクが増加することを考慮する必要がある。第三に、有効なワクチン、抗ウイルス薬、検査、マスク着用、距離、換気やフィルターによる空気中のウイルスの阻止方法に関する深い理解など、今利用できる強力な武器を世界中で使用しなければならない。第四に、私たちはより広範な変異ウイルスから身を守るワクチン(いわゆるユニバーサルワクチン)に投資しなければならない。」

 

より危険で、より感染伝播のしやすい変異ウイルスの出現を防ぐ最善の方法は、感染の拡大を止めることです。アルファはイギリスで、デルタはインドで、オミクロンはアフリカ南部で最初に発見されましたが、いずれも感染が広がっている場所でした。目先の利益で感染を放置していても、残念ながら歴史は繰り返されるかもしれません。

偉大なワクチンが効果を示してくれている間は良いですが、そうでなければ残念ながら逆戻りする未来もありえます。そして、頼みの綱の一つであるワクチンへの信頼が人々の中で下がってしまったりしたら、考えたくもありませんが、状況はさらに悪化することさえありえます。

今後の状況がどう転ぶかは、私たちの手にもかかっています。もちろん誰もが楽観的シナリオの未来を歩みたいと思っているはずで、それは著者も同じです。しかし、「パンデミックはもうおしまいだ」と楽観的シナリオを想像しすぎることこそが、それを遠ざけてしまうかもしれません。未来のシナリオは決まっていません。

近視眼的な議論にとどまらず、最悪のシナリオも想定しながら、「分かったつもり」にならず未来の不確実性を受け入れる。そうした謙虚な姿勢こそが私たちに求められているのではないでしょうか。