一方既婚者と不倫しており、さらに最近酔った同級生からの突然の電話に舞い上がっていた長女・由香(木南晴夏)は、夫の浮気を受けて実家に帰ってきた里香が離婚しようと思うという話をしているとき、「私この議論のどっち側にいるんだ?」と冷静に考えちゃうのは確かにそうだよなと納得します。
心の声以外にも、とんでもないシーンがところどころ出てきて目が離せません。三女の美香は別れたいのに家にいついて出ていかない彼氏と取っ組み合いしたり、合コンで知り合った素敵な男性(高杉真宙)に恋をして言葉遣い・服のセンス・立ち姿まで変わりみんなに「誰?」と言われるほど極端です。
長女の由香は不倫相手が妻ではなさそうな別の女と歩いてるのを見てなぜか相手の家へ。落ち着いて部屋に上げる妻と、由香を見るなり逆ギレしてきた相手を見て奇声をあげながら物を投げつけ暴れ、出てきます。由香の様子がおかしいことに気づいていた父は、ステテコに腹巻の上にコートを引っかけただけの姿で探しに行くのでした。里香が帰ってきても「終電までに帰りなさい、夫婦は話し合わなきゃならん」と言っていた源太郎が、浮気と聞いたとたん「5番アイアン持ってきなさい」と物騒すぎるのにも笑ってしまいます。
さらに、源太郎が心の声から行きついたり、お母さんと話したりして辿り着く教訓が素晴らしい。特に第3話、退職した人が残した資料、冷蔵庫のネギを使い切るかどうか、といった話から辿り着いた教訓は心に残りました。
「やり残してこその人生だ!」「やり残しのある人生こそ! 素晴らしい人生だ!」という言葉には、感動すら覚えたし何だかすごく励まされました。出てくる食べ物も毎回美味しそう。源太郎、他の部分はすべてにおいて昭和なのに、こういった話を伝えるときは最先端で伊藤家リモート会議を行うのにはちょっとツッコみたくなります。彼は現役会社員だから常識なのでしょうか。
やや暴走しがちな父・源太郎ではありますが、上記の教訓含め、愛にあふれたあたたかい人なのが結果として伝わってくるストーリー展開が見事です。心の声の中には家族全員の目玉焼きや納豆の食べ方の食のこだわりを長尺で紹介していたり(美味しそう)、部下を連れて行った蕎麦屋の老夫婦のオペレーションの様子を見て連れてこられたほうもほっこりしてしまったり。家族や食べ物や日常のいろんなものを、愛情深く見ている人だとわかります。
源太郎や姉妹とは違い、心の声は口に出ちゃうタイプで、考えるより割り切るタイプの母・千鶴(MEGUMI)の存在もいいアクセントになっています。お父さんが持論を述べるとき、「そうよ、そうねそうね……」とずっと同意していますが、実は適当に聞き流しているので「お茶」と言われても「そうねそうね……」と続けてしまい、気づいた源太郎も怒るでもなく「もう母さん」みたいな感じになる関係性が最高だし、考えてしまうタイプの他の家族が、千鶴と話してちょっと救われる、みたいなシーンも多いのです。
ゴールデンでないことが残念なくらい秀逸なこの作品。まだチェックしていない方は、ぜひ一度観ていただきたいです。
脚本は『闇金ウシジマくん』『カイジ』『新しい王様』などの山口雅俊。結構前の作品ですが、彼が手がけた深津絵里主演『きらきらひかる』も名作なので、こちらも機会があったらぜひ。
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