明らかに問題を抱えている人が、目の前にいたとして。「大丈夫ですか?」と声をかける人は、どれだけいるのでしょうか。もちろん、それが仲の良い相手ならば、救いの手を差し伸べることもあると思います。けれど、大した知り合いでなければ、見て見ぬふりをしてしまう人も多いのでは? お節介だと思われたくない。いや、そもそも他人の問題なんて興味ないし、自分のことで精一杯。そんなふうに自分を言い聞かせて、目を逸らす。むしろ現代には、“お節介=迷惑”な風潮さえありますよね。

しかし、『となりのチカラ』(テレビ朝日系)の主人公・中越チカラ(松本潤)は、グイグイ首を突っ込んでいきます。ただ同じマンションに住んでいるだけの人の問題を、自分のことかのように悩んで、必死に解決策を考えていく。チカラは、スーパーマンではないので、すぐに問題が解決できるわけではありません。それでも、誰かの心をちょっぴり良い方向に動かすことができる。現代の風潮と逆をいく主人公が、チカラなのです。

虐待、認知症のヤングケアラー...シビアな問題の身近な援助を描くドラマ『となりのチカラ』の力_img0
『となりのチカラ』(テレビ朝日系・毎週木曜よる9時〜)

正直、取り上げている題材はかなりシビア。第1話で描かれたのは、虐待問題でした。中越一家、が暮らす隣の部屋で、父親から虐待を受けている小学生の好美(古川凛)。「キャー! 助けて!」という声が聞こえると、チカラはすぐに駆けつけていきます。けれど、何もすることができない。児童相談所に相談したり、警察に通報したりしたら。チカラの妻・灯(上戸彩)が言うように、もっとひどい状況になってしまうかもしれない。それでも……とチカラが導き出したのは、好美に手旗信号を教えることでした。

「ピンチの時には、これを振って」と預けられた旗が、好美にとっては唯一の救いになったのではないでしょうか。今のところ、完全に虐待が収まったわけではない。それでも、好美の“心”を少しだけ救うことができた。

第2話では、ヤングケアラー問題。第3話では、外国人労働問題が描かれます。チカラは、問題の根本を解決することはできていません。認知症の祖母・晴江(風吹ジュン)と二人で暮らしている託也(長尾謙杜)だって、いまだに一人で介護をしている。

 

それでも、託也が「ばあちゃんが認知症になってから、ずっと思ってた。できれば、早く死んでくれないかなって」と溜め込んでいた想いを吐き出せたのは、チカラが首を突っ込んでいったから。序盤は、もうお節介を焼くのはやめた方がいいのでは? と思うのに、最後はいつも、チカラがいなかったらどうなっていたのだろう……とゾッとします。

 

本作を通して、まずは現代社会が抱えている問題を知っていく。そして、チカラとともに本気で解決策を考える。一人ひとりにできることは、微々たるものなのかもしれない。それでも、毎週木曜日の夜にその取り組みを続けていけば、チカラの娘・愛理(鎌田英怜奈)が言っていたように、この世界はちょっとだけ良くなっていくのかもしれません。

ちなみに、本作の脚本を担当しているのは、『家政婦のミタ』で社会現象を巻き起こした遊川和彦さん。数々の“ちょっと変な人”を描いてきた遊川さんだからこそ、描ける新たな松本潤の姿。『となりのチカラ』は、「こんな松本潤、見たことない!」という表情をたっぷりと堪能できる作品でもあります。

人と人とのつながりが希薄になっている現代に、遊川和彦×松本潤のタッグが、どのような影響を与えていくのでしょうか。今後の展開にも期待大です!
 


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