フリーアナウンサー馬場典子が気持ちが伝わる、きっともっと言葉が好きになる“言葉づかい”のヒントをお届けします。

 

世の中には4文字(音)の略称が溢れています。
「インスタ」「アメブロ」「サブスク」「飯テロ」や、もはや一般名称の様な印象の「コンビニ」「パソコン」「ドタキャン」。
「逃げ恥」「朝ドラ」「レコ大」「ぐるナイ」「Mステ」といったドラマやテレビ番組。
懐かしいところでは、「ロンバケ」「あぶデカ」「金妻」「ワンレン」「ボディコン」。
人名やグループ名でも、「ドリカム」「ミスチル」「キンプリ」「キムタク」「マツケン」「クドカン」などなど。
慣用句の略、「棚ぼた」もありますね。
音(拍)が短くなることで言いやすく、語感がポップになります。

そういえば、私のことを「ばばのり」と呼ぶ友人がいますが、たった1音、されど1音。「こ」を省いた4拍の方が、軽やかになります。

なぜ4拍の略語が多いのか……を探るうち、興味深いデータを見つけました。(※)『大辞林』の見出し語14万756語を拍数別に調べたもので、一番短い1拍から、一番長いものは20拍まであり、その中で一番多かったのが、4万9661語の4拍語。計算すると、全体の約35.2%を占めていました。4拍が、物理的に一番馴染みのある拍数と言えそうです。

 

2番目に多いのは3拍語で約19.6%、3番目が5拍語で約15.7%ということです、確かに、特に一つの単語を略す場合には「スマホ」「マック」「マクド」などの3拍語も多いですね。
ちなみに、一番長い20拍は1語のみ、「竜宮の乙姫の元結の切り外し」だそうです。

一説には、日本語の元となる和語も漢語も2拍が基本だったそうで、「逃げ恥」のように、前半と後半から2拍ずつ取って、4拍(音)となるパターンが多いのも頷けます。

親しまれているからこそ略称で呼ばれるようになり、親しみやすい略称が付くと、さらに親しみが増したり知名度が高まったり。略称の効果はすごいですね。

「まん延防止等重点措置」を略した「まん防」も、あっという間に広まり、当初はテレビ番組などでも使われていました。
ただ、緊張感に欠ける響きで状況にそぐわない印象を与えるため、程なくして、略すときは「重点措置」などに置き換わりました。
略語は親しみやすい半面、砕けた印象を与えてしまうことも。

そこで報道では基本的に、ある言葉が最初に出てくる時は、正式名称を用います。
例えば、冒頭で「厚生労働省」と言い、二度目からは「厚労省」などと略して時間や文字数を節約します。新聞では「同省」とすることが多いですね。

その言葉が出てくるたびに正式名称を使うと、それはそれでリズムやバランスが崩れ、中身が伝わりにくくなってしまうことがあります。
一方で、有名人の場合は、当の本人は略称で呼ばれることを好まない方もいらっしゃいます。
正式名称か、略称か、当然のことですがTPOが大切なのですね。

栗林均氏「現代日本語のアクセントの型の分布ー『電子ブック版大辞林』を資料としてー」

姪っ子はミニチュアピンシャーを略して「ミニピン」。でも小型犬の基準の5kg超えているので「デカピン」(笑)

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