フリーアナウンサー馬場典子が気持ちが伝わる、きっともっと言葉が好きになる“言葉づかい”のヒントをお届けします。

 

この2年間、手放すことのできないマスクは、機能面や衛生面から使い切りのものを使っている方が多いと思います。それがポイ捨てされてしまったのか、岩手県沿岸で網にかかっていたウミガメの排泄物から世界で初めてマスクが発見されたり、散歩中の犬が誤飲してしまう件数が増えている、というニュースを見ました。

 

これまでも、マイクロプラスチックや、登山やアウトドアブームの陰で……といった話、イベント後の惨状などが問題となっていましたが、自分が出したゴミは自分で片付ける、気づいたら自分のもの以外も片付ける。そして、元通りにして(元が汚れていたならより綺麗にして)立ち去る、ということが当たり前ではなくなっていることが、また証明されてしまったことは残念な気持ちです。

先日、電車内に手袋が落ちていました。車内は空いていて一目で分かるのに、しかも綺麗なものなのに、誰も見向きもしていませんでした。私は自分が良く落とし物をするので(なぜか気に入っていたものほど、すぐに気づいたとしても見つからないまま……涙)、いつもなら状況によって、網棚の上に乗せたり、駅員さんに届けたりするのですが、今は人のものにむやみに触ることはお互いに憚られる日々、どうしたものか悩んでしまいました。おそらく先に乗車していた皆さんもそうだったのでしょう。

人間社会の問題は、人間同士で助け合いたいところですが、コロナ禍の、見知らぬ人がポイ捨てした使用済みのマスクとなると、どうしてもそのまま打ち捨てられてしまうことが多くなりそうです。
かといって、罪のないウミガメや犬が被害に遭うのは悲しすぎます。

ニュースでは、昨年の7月以降、マスクのパッケージに、「適切な廃棄を心がけましょう」「ポイ捨てしないでください」という2つのマークが描かれ始めたとも伝えていました。
ルールや注意書きの多さと、個々人の倫理観や判断力・想像力の低下は、比例している気がします。
と同時に、注意書きは、今がどんな社会なのか、の鏡であるとも感じました。
そして、これから何に気をつけて、どうしたらいいのか、を示唆してくれているようにも思えます。
 

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