フリーアナウンサー馬場典子が気持ちが伝わる、きっともっと言葉が好きになる“言葉づかい”のヒントをお届けします。

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今週もまた、締切の当日に原稿を書いています……。
ちょうど1週間前、前回の締切のその日に、ロシアがウクライナへの侵攻を開始しました。
「こんなことを書こうかな」と前もって考えていたものを何とか形にはしましたが、正直、あまりの衝撃に言葉も気力も失ってしまい、なかなか書き始めることが出来ませんでした。

そして本当は、先週の4文字略語に続いて今週は、実は略語だった意外な言葉について書くつもりでした。
ただ、SNSでの気楽な呟きは出来ても、書く仕事で気楽なことを綴るのはまだ心が追いつかなくて……。

平和な、穏やかな街にミサイルが打ち込まれる瞬間や、壊された建物、小さな子どもの涙、自由のために戦わなければならない人たち、離れた地から家族や友を思う人たち……。
様々な映像や報道を目にするたびに、胸が締め付けられて、涙がこぼれてきます。
9.11や3.11の時、自分の無力さに打ちのめされ、言葉は力になるのだろうか、テレビは役に立てているのだろうか、などと葛藤しながら過ごした気持ちも蘇ります。

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この息を呑むほど美しい景色は、民間人の生活圏が爆撃を受け、亡くなった方もいると報じられている、チェルニヒフ。(撮影:稲田美織さん)

それでも、伝えることを、話し合うことを諦めない人々がいます。ゼレンスキー大統領の訴え、ウクライナの人々の声だけでなく、ロシア国内の勇気あるデモも、演習と聞いていたのに戦争だったことに戸惑うロシア兵の母へのメッセージも、ボリショイ劇場の総支配人をはじめとしたロシア文化人たちのプーチン大統領への直談判も。

 

聞く耳を持たないように見える相手に、停戦交渉を挟みながらも攻撃を強める相手に、その声は、そこに託した思いは伝わるのでしょうか。
渦中にある人々の切なる言葉や、平和を願う人々の思いが、この困難な状況を導いてくれることを、心から祈っています。

そんな中、ロシアでは、虚偽の情報を流した者を禁固刑にするという法律が出来ました。
報道や表現の自由はなく、事実かどうかも関係なく、国の都合で虚偽とされ、罰せられてしまうことの恐ろしさ。ロシア国内の声がこの戦争を止めてくれる、という希望が少し後退してしまった気もします。
ただ一方で、ロシア政権側はそれだけ、事実を伝える情報や、事実を見据えて発言する人々を恐れているとも感じます。

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ウクライナの青空と菜の花畑。ウクライナを3回訪れ、美しい街や人々の笑顔を撮影してきた写真家・稲田美織さんの撮影。彼女は今、メディアを通してウクライナの素晴らしさを伝え、心を寄せてもらう努力を重ねています。

いま、同じ地球人として、平和を願う1人の人間として、連日の報道に傷ついている方もたくさんいると思います。
悲しいニュースに傷ついている方、自分は何も出来ないことに辛い思いを抱えている方は、どうか自分のことも労ってあげてほしいです。
そして、自分の目の前の、この日この時への感謝も、忘れずにいようと思います。
来週はまた、頑張ります。

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