「お出かけ」こそが歳を取らせない大きな鍵


ただその分、母親が歳をとらないための協力は惜しみませんでした。やはり出歩くこと、「お出かけ」こそが、この年代に歳を取らせない絶対の鍵と感じていたので、時間を見つけてはコンサートに連れて行ったり、 銀座に買い物に出かけたり、定期的に外できちんと食事をしたり。

実際、外に連れ出すたびに母親は10歳も若返ったような輝きを放つ気がしました。だから負担に思いながらも、それを続けてきたのです。

にもかかわらず、母親はやはり確実に歳をとっていきました。当たり前のこと。歳をとらせないなんてできるはずがないのに、気持ちの上ではそれをなかなか受け止められなかったのです。

髪がいよいよ薄くなったり、耳が遠くなったり、ちょっと歩くと疲れたり。すべては必然なのに、何とかならないものかと、もがきました。養毛剤を買い、耳が良くなるサプリを探し、コラーゲンを飲ませるという具合。

 

そう、まるで教育ママのよう。一体何を考えていたのか、自分でも説明がつかないほどだけれど、今振り返ると、“母親のため”というよりも、“自分のため”だったのかもしれないと思えてきます。

もちろん最初は、母親を若々しく保つことが、娘の使命であるという意識が勝っていたはずですが、いつの間にか自分自身をダブらせていたのかもしれません。
娘はだんだん母親に似てくるというけれど、知らず知らず母親の姿に自分の未来を照らし合わせ、こうでなければという強い思いを、そこに託していたのでしょう。それこそ母親が娘に、人生の望みを託すように。