「〜な人は生きてる価値がない」そんなショッキングな言動で注目を集め、炎上する著名人や政治家たちのニュースが後を絶ちません。その根底にあるのは、社会全体で優れたものを優遇し、劣ったものは排除すべしという「優生思想」。科学的にも倫理的にも間違っていると戒められているにも関わらず、人間に優劣をつける差別発言はなくならず、ある一定の支持を集めるのも事実です。「優生思想」の歴史は古く、社会が経済的に不安定な時代に支持を集めやすいと言われています。世界的に先の見えない不安感が蔓延する今、優生思想が生まれる土壌と私たちの中にもある優劣の意識についてを掘り下げます。

社会派ライターの渥美志保とミモレ編集部のバタやんこと川端里恵の“アツバタ”コンビが、今気になるニュースなキーワードの背景を探り、学んでいく新連載「知りたい!気になるニュースなことば」第1回です。

 


「ホームレスの命なんか」発言の裏にあるもの


編集・川端里恵(以下、バタ):最近、著名人の差別的な発言が問題になったときに「優生思想が根底にあるのでは」という指摘をよく耳にしますよね。

 

渥美志保(以下、アツミ):しますね。先日亡くなった石原慎太郎元都知事による「業病のALS(筋萎縮性側索硬化症)」ツイートや、同性愛者に対する「気の毒」発言などもありました。また、ALS患者の女性を安楽死させたとして医師が逮捕された事件を受けて、日本維新の会代表の松井一郎(現・大阪市長)が「尊厳死について議論しよう」と呼びかけて、命の選別ではないかと問題になりました。

(※編集部注釈:業病とは「前世の悪業の報いによって起こるとされる、なおりにくい病気のこと」)

バタ昨年は、メンタリスト・DaiGoさんのYouTubeでの発言「ホームレスの命なんてどうでもいい」なんかも優生思想と言われていましたね。でも正直、どういう思想なのか正確には把握できてないんです、私。

アツミ:ですよね、私もです。ということで、今日は先生をお呼びしております! 浅田環さんです! パチパチパチ! 浅田さんはNHKで福祉関係の番組を多く手掛けていらっしゃる番組ディレクターの方です。

浅田環さん(以下、浅田):初めまして!

浅田環さんテレビディレクター。障害者の暮らしやジェンダー問題に関する番組を多く制作。2012年からNHK「ハートネットTV」など福祉関連番組に携わる。

アツミ:浅田さんはNHKの「ハートネットTV」という番組で、「優生思想」をテーマに取材したそうですね。「優生思想」ってどういう考え方なんでしょうか?

浅田:かみ砕いて言うと「命に優劣をつけること」。一定の価値観で「こちらは優れている、こちらは劣っている」と選別を行う考え方です。ベースにあるのは19世紀後半のイギリスで命名された「優生学」で、「優れた血筋」を保存すると同時に「劣った血筋」を排除し、人間を「優秀なもの」にしていくための学問です。私は戦後70年のタイミングで「ナチス・ドイツ」の特集番組に携わることになり、そこで初めて知りました。

 

バタナチス・ドイツよる迫害や虐殺と繋がってたんですか。怖いですね。