私たちの中にもある「うちなる優生思想」とは
浅田:でも調べてみると、ナチスによる「優れたものを残し、生産性のない命、社会の役に立たない命は殺してもいい」という発想の根源は、もっと以前から存在していました。どこの国の歴史にも、王家や武将の優秀な血統を残さねば! とかあるじゃないですか。古代ギリシャの哲学者プラトンも「身体面で不健全な人は死ぬに任せるべき」とも記しています。
特定の社会の中で「良いとされるもの」のみを欲するのは、わりと普遍的な欲望だと思います。
バタ:日本にも「元気な男の子を」的な思想がありましたが、ああいうのも、もしかして?
浅田:基本的には同じ考え方ですよね。そのベースには「家は男の子がつぐ。その方が有益」という家父長制の価値観もあります。結局、優劣の判断基準は、その社会における多数派が「何を重んじるか」で決まるので、男性優位社会であれば「男の子」が「優生」。視線を変えれば逆転するようなものでしかありません。
バタ:でも「見た目」とか「頭の良さ」とかで、優劣をつけちゃうところって、誰にでもうっすら……いや、結構あるような気がするんですが……。
アツミ:でもでも、少し前に「金髪碧眼の子供が欲しいなら、着物を着よう」という広告が炎上したじゃないですか。そりゃ「金髪碧眼の子」を見てキレイだな~とは思うけど、あの広告には「これはひどいな~」って思いましたよね。
浅田:「金髪碧眼」を「キレイだな~」と思うのは個々の価値観ですが、「金髪碧眼」を他と比較して「優れている」と考えて、「金髪碧眼の子供を産む!」と目指してしまうのは危険です。エスカレートすると他の人の価値にまで優劣を付けてしまう……「うちなる優生思想」の種を自覚したほうがいいかもしれません。そして、これを政治的に最大限利用したのがナチス・ドイツです。
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