この頃よく耳にする”パラレルキャリア”。パラレルキャリアとはお金を稼ぐことを目的とした「副業」にとどまらず自分の「好き」や「強み」を生かした活動に本業と並行して取り組むことを指します。「やってはみたいけど、何から始めたらいいの?」という方に向けて、「スナックひきだし」の紫乃ママこと、木下紫乃さんに〔ミモレ編集室〕メンバーがお話を伺いました。
木下紫乃さんは2016年に「40代、50代のミドルシニア向けキャリア支援」を掲げて「ヒキダシ」という会社を設立。企業研修やセミナーを開催する他、昼だけ営業する”昼スナック”を開き、これまでに約2000人の背中を押してきた経験の持ち主。なぜ”昼スナック”を始めたのか? パラレルキャリアを実現できている人にはどんな共通点があるのでしょう?
好きなことや夢がないとパラレルキャリアは始められない?
ーースナックに来られる方々は、キャリアについてどんなお悩みをお持ちなんでしょうか? コロナ禍で変化はありますか?
木下紫乃さん(以下、紫乃ママ):コロナ禍を機にリモートワークが進み、通勤時間がなくなり、自由な時間が増えた方も多いと思います。物理的に会社との距離ができたことによって、「今の自分」について立ち止まって考え始めた人は多い印象ですね。
このスナックにお悩みをもって来られる方は、失業したなどの深刻なケースではなく、今の仕事がつまらない、しんどい、このまま管理職になっていいのかな、といった漠然とした不安を抱えたミドル世代の方が多い。コロナ禍で時間ができて今まで真剣に働き方やキャリアについて考えてこなかったことに不安を感じ始めているのかもしれませんよ。
ーーミモレのオンラインコミュニティ〔ミモレ編集室〕でキャリアに関するアンケートを行なったところ※、「パラレルキャリアにすでに取り組んでいる」人は28%、「取り組んでみたい」と答えた人は65%もいて、複数のキャリアを持つことへの関心の高さを感じました。一方で、これまでに積み上げてきたものがあり、経済的な安定感は手放したくないものの「なり行きで仕事を続けて後悔したくない」「思い描いていた理想とは違う」「チリツモな精神的疲労感がある」といった声が多くみられました。
(※〔ミモレ編集室〕メンバー限定アンケート2022年2月実施・回答数43件)
紫乃ママ:今の安定は手放したくはないけど、理想とは違うといったモヤモヤって、身近な家族や友だちには話しづらくないですか? 社会って、会社や家庭だけじゃないはずなのに、それ以外の繋がりが少ない人が多いと感じます。スナックは、ほどよい距離感でいられる場所。その場限りの関係だからこそ、話せることってありますよね。そういった場所を持つことも、生き方や働き方を変える一つのきっかけになるんじゃないかと思って、スナックをやっています。
お客さん同士の話からご縁がつながって、新しい仕事を始めた人もいます。とにかく興味があることには、ぱっと飛びついてみる”軽はずみ力”をもつことって大事。考えすぎずに、まずは行動してみる人が、うまく変化に乗っていっているように思いますね。
ーーパラレルキャリアを始めるには、まずは自己分析をして自分の強みや好きなことを掘り下げるのがいいのでしょうか?
紫乃ママ:好きなことや夢がないと新しいことを始められない、と思っている人は多いですよね。パラレルキャリアにしても、自己分析して、やりたいことを見つけてきちんと計画を立ててからスタートさせるものだと思っている方もいるかもしれません。私が開催しているワークショップでもスキルやライフログの棚卸しはしますし、ある程度の振り返りは必要ですが、自己分析のやりすぎには意味がないですね。自己分析ばかりやっていて、小さな一歩を踏み出せないのは時間の無駄とも言えます。残された時間はどんどん短くなってしまうのだから、さっさと動き出すことのほうが大事。
まずは誰かの真似でもいいから、何かを始めてみることが大事です。始める前は「自分には何ができるだろうか? 何が苦手だろうか?」という”コト”に注目しがちですが、何かができるからチャンスが訪れる訳ではなくて、何かを通してつながった”ヒト"が次のチャンスを持ってきてくれる。例えば、友達がライターとして楽しそうにやっている、私も週に1時間だったらやれそうかなと思えば始めてみる。やってみると必ず新しい人に出会いますよね。その出会いからさらに縁が広がって自分の居場所が増えていく。パラレルキャリアの場合は「違うな」と思ったらすぐにやめてもいいんだから、アンテナにひっかかったことがあればすぐに始めてみればいいんですよ。
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