恋をしない主人公が選んだ生き方・あり方とは?『恋せぬふたり』
岸井は他者に恋愛感情や性的欲求を持たない主人公・咲子を演じた。厳密にいうと、違和感を持ちつつ自分は変なのか? と悩むところから始まり、そういった人たちがいて自分もそうなのだと自覚するところからはじまるこの物語。同じく恋愛感情や性的欲求を持たない高橋(高橋一生)との共同生活や家族・元カレなどとのやり取りを通じて「新しい家族の形」「自分のあり方」を模索していく咲子に、自分の性自認に関係なく勇気をもらえる物語です。
はじめは自分の気持ちを言葉にするのに遠慮がちだった咲子が、高橋との同居をきっかけにどんどん「自分はどう生きたいか」「どうありたいか」を自覚して、生き生きしていく様子が印象的です。自分の気持ちを隠して曖昧に相手を立ててきた咲子が、はっきりと自分の思っていることが希望を口にして、波風はありつつも相手の考えも和らげていく様子に、一緒に生きていろんなことに立ち向かっている気持ちになり、最後は彼女が見つけた生き方に涙が出そうなくらいうれしい気持ちになりました。自分も自分がどんな生き方をして、まわりの人とどんな関係を築いていきたいか、あらためて考えて言葉にしていきたいなと思いました。
テルコのようなちょっと引いてしまう主人公も、咲子のような寄り添いたくなる主人公も、どちらも演じられるところに、彼女の演技の幅を感じました。
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