誰のための服作り? 働く喜びを見失った会社員時代


もう一人お話を伺ったのは、服飾デザイナーという専門性を持っているSumiさん。勤めていたアパレル会社では、効率を優先する製品作りにおもしろさを感じなくなっていたそうです。

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服飾デザイナー、ウエディングドレスブランド運営、洋裁講師
Sumiさん(46歳・東京都在住)


44歳でブランドを立ち上げ、45歳から洋裁の講師も


24歳 アパレル会社に就職
33歳 結婚
36歳 第一子出産
44歳 退職、ウェディングドレスのブランドを立ち上げる
45歳 障がい者就業支援施設で洋裁の講師を開始


「着る人の喜ぶ顔が見たくて就職したのに、デザイナーはお客様とほとんど顔を合わせることはなく、ひたすら仕事に明け暮れる日々。だんだん誰のために服を作っているのかわからなくなって……。もう解放されたいという気持ちが大きくなり、退職を決意しました」(Sumiさん、以下全て)

そんな時、アメリカの友人の結婚式に出席し、ミドル丈のカジュアルなドレスを着た花嫁が、参列者とともにパーティーを楽しんでいる姿に感動したことを思い出します。そして、“快適で・自由で・自分らしい”そんなドレスが作れないだろうか、と考えるようになり、デザイナー仲間の友人と意気投合し、オーダーメイドのウエディングドレスブランドを立ち上げました。

お金じゃない価値もある。主婦もボランティアも立派なキャリア_img0
Sumiさんが制作したウェディングドレス


フォトウエディングの写真撮影に立ち会うこともあり、Sumiさんが作ったドレスをまとった花嫁に仕上げのヴェールをつける瞬間は、いつも感動で涙ぐんでしまうそうです。
 
「この広い世界で出会って結婚するって、奇跡のような出来事だなと。ドレスづくりに携わることで、幸せを分けてもらったような、あたたかい気持ちになります」

 


誰かに必要とされる喜びを噛みしめる、服作りを通じた障がい者支援


独立して1年経った頃、障がい者支援施設を立ち上げた知人から声がかかり、講師として週に2日洋裁を教えることに。着物を再利用したエコバッグや、生地問屋から譲り受けた素材から作るマフラーなど、一から商品のアイデアを考えました。障がいを持つ利用者に作業手順を教えるために、一人ひとりの特性に合わせて伝え方も工夫しているそうです。
 
「“平行”という概念がわからない方に、どうやって布に平行に線を引いてもらうかには苦労しましたね。その時は1センチ幅の長ーい型紙を作ってガイドラインにすることで解決できました。言葉だけに頼らないコミュニケーションは、子育てで養われたスキルかもしれません。満面の笑みで『できたよ!』って持ってきてくれた時は嬉しかったなぁ」

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施設で作ったマフラー。素材は生地問屋の破棄在庫を寄付されたもの。


そして、もう一つの密かな楽しみは、所長から手渡される給料袋の手書きメッセージです。 

「『素敵なSumi先生がいてくれることがこの施設の自慢であり、私の自信となっています』って書いてくれていて。私のことを見てくれているんだな、必要とされているんだなと実感しました」
 
これからは、撮影用の衣装など、ウエディングドレス以外の服作りも手掛けていくというSumiさん。服作りの喜びを取り戻した喜びがにじむ、柔らかな笑顔が印象的でした。
 

人生に不足感を感じた時、パラレルキャリアを始めてみては? 


自分がもともとやりたかった"原点"に立ち返り、新たなキャリアを開始した二人。

主婦×日本語学習支援ボランティアのじゅてさんは、好きなことを活かした社会との繋がり、デザイナー×障がい者支援施設講師のSumiさんは、服作りの喜びと、それまでのキャリアでは満たされなかった思いを実現し、お金に代えられない喜びを得ました。そして、誰かに必要とされているという充足感を得て、さらに次のステップへと歩み始めています。

さまざまなスキルが蓄積されたミモレ世代の私たちは、これまでの人生で色んな"種"が育っているはず。
例えうまくいかなくても「新たな縁ができたらラッキー」というくらいの軽やかさで、もっと自分らしく生きていくために、第二のキャリアに向けて一歩を踏み出してみませんか?
 

次回は、パラレルキャリアのヒントとなる"種"を探るべく、〔ミモレ編集室〕のメンバーが参加したワークショップをご紹介します。
 

インタビュー/言山寧子、池田麻衣、高山リサ
ライティング/池田麻衣、高山リサ
イラスト/aiko
 


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