「パラレルキャリア」と聞くと、バリバリ働くキャリア志向の人の話だというイメージがありませんか? パラレルキャリアは、決してハイキャリアに限った話ではなく、目的はお金を稼ぐことにも限定されません。

今回は、パラレルキャリアの実践例として、ボランティアで日本語の学習支援をしている主婦のじゅてさんと、ドレスブランドの運営と障がい者支援施設で洋裁講師をしているSumiさん、2つのケースをご紹介します。


そもそも、パラレルキャリアのメリットって?


コロナ禍において、テレワークが進み、働き方に多様化が認められる時代となりました。一方で、人間関係が希薄となり、人と人のつながりに大きな価値をみいだすきっかけとなりました。今後の人生を見つめ直した方も多いのではないでしょうか。
「何か物足りない……」とモヤモヤしているなら、"第二のキャリア"を考えてみる良い機会かもしれません。

第二のキャリアというと、まず収入を目的とした「副業」が思い浮かぶと思いますが、「稼げる仕事を見つけなきゃ」と思うと選択肢が狭まるもの。
収入にこだわらずにパラレルキャリアへと道を広げることで、一つの生き方・働き方では得られない経験や人との繋がり、精神的な満足感、そこからさらにスキルアップやキャリアアップの原動力を得やすくなります。その活動の形は、会社員の傍ら週末は合唱の指導、主婦をしながら公園整備のボランティア、など様々です。

〔ミモレ編集室〕では、人生の充実感を得るために、自分の「好き」や「強み」を生かし、人同士のつながりを大切にしたパラレルキャリアという生き方に注目しました。

 


マネジメント力、調整力、コミュ力……主婦業で身についたスキル


一人目のじゅてさんは、ボランティアで日本語を教えている主婦。2つの活動を通じて得た喜びや身につけたスキルについて聞くうち、「主婦業×ボランティア」も立派なパラレルキャリアなんだと実感しました。

主婦業、日本語学習支援(ボランティア)、ライター
じゅてさん(50歳・兵庫県在住)


48歳で日本語学習支援のボランティアをスタート


26歳 日本語教育の学校に通学(約2年)
27歳 結婚・退職
29歳 第一子出産
35歳 第二子出産
48歳 日本語教室のボランティア開始


バブル崩壊直後の新卒での就職活動がうまくいかず、長らく専業主婦として子育てをしていたというじゅてさん。出産後に再就職することは考えませんでしたか? と少しいじわるな質問をしてみるとーー

「就職も考えたんですけど、調べてみたら、保育園代や預かり料の方が高くついちゃうことがわかって。じゃあもう私がベビーシッターや家庭教師、家事代行サービスをやっていると考えて、『一日いくら取られちゃうところを、これで儲けたから』って思うことにしました」(じゅてさん、以下同)

主婦業では、家事を担うほかに、子どもの時間管理や、習い事の送迎、夫への連絡などなど、やることは山積み。

「膨大なタスクを把握しながら同時並行でこなすうちに、自然とマネジメント力や調整力が磨かれていたようです。相手の性格に応じて伝え方を変えるコミュニケーション力は、ボランティアで日本語を教えるうえでも役立っています。専門性こそないものの、『日本で主婦業がそこそこできたら、何の仕事でもできるんとちゃう?』って思ったんですよね」

3年前からボランティア団体に参加して、週に1回、日本で働いている外国人の方やその家族などに、マンツーマンで日本語学習のサポートをしているじゅてさん。

日本語を教えるようになった最初のきっかけは、26才のときに遡ります。