ファッションスタイリスト佐藤佳菜子さんが日常のおしゃれについてのアイデアや思いを綴る連載です。
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何年も変わらず好きな香りがいくつかある。松栄堂のお香「堀川」、そして、サンタマリア・ノヴェッラのポプリ、そして、イソップの香水「マラケッシュ」。この3つは、使い終わるたびになんどもなんども買っては補充しているうちに、どんなときも、常に暮らしの中に寄り添う定番の香りになった。
3つの香りとの安定した関係性にはしっくりきているし、いまだにいつ嗅いでもいい匂いだとは思うのだけれど、わたしの中にある冒険心と浮気心がむくむくと頭をもたげてくる。「たまには違う香りもまといたい」
お店に並ぶ香水の瓶を見かけるとサササーっとにじり寄っては、クンクン。どこかに理想の香りはないかと嗅いでみるのだけれど、しっくりくるものがなかなか見つけられない。好きなようで……そうでもないようで……わたしらしいのか……どうなんだろう……うーーーーーーーん……。と決め手に欠けて決められない。わたしの理想の愛人はいったいどこに。
フローラルやシトラスなど、よくあるフェミニンな甘い匂いはなんだか自分にはしっくりこないような気がしてなじまないし、だからといって、ウッディやスモーキーなど男性的な香りもイマイチ似合わない。
先日、ポプリを買いにサンタマリアノヴェッラの銀座店に立ち寄ったら、昨今のコロナやロシアの状況のせいで、ほとんどの人気商品が欠品して入荷待ちになっていた。香水に至っては在庫があったものが数種類。そうなってみると、逆にいまここに残っている香りはいったいなんぞや、という好奇心が湧いて、数種類だけなら全部試してみたい気持ちになった。
「残り物には福がある」という使い古されたことわざは誠か嘘か、なんと、そのたった数種類の中に、好みの匂いを見つけた。もう野生動物の勘だといってもいい。これはわたしの香りだと思った。あまりに即決するものだから、お店の方は唖然として、もう少し待てば欠品しているものも順次入荷するからそれを待つこともできるという趣旨のことを何度も教えてくれたのだけれど、もう、そんな迷いはなかった。
“チャッチャラー、
サンタマリアノヴェッラの「トバッコ・トスカーノ」が仲間に加わった”
やってきた浮気相手は、はじめの日から非常にしっくりきていて、新しい気に入りの香りを見つけたことで、毎朝、身支度をするときも、ほわんほわんと心が浮き立つ。濃すぎず、薄すぎずの塩梅も非常にいい。
ピグミ様も、いつもいい塩梅の芳しい香りがしていて、我が家ではたいへん人気の香りです。おすすめは、湯たんぽのようなタプタプのお腹に顔を埋める方法。ピグミ様自ら、どうぞどうぞお嗅ぎなさい、というようにお腹を差し出してきます。
今週は香りについてでした。みなさまにもお気に入りの香りはありますか?
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文/佐藤佳菜子
構成/高橋香奈子
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