新年度が始まると、毎年のように新入社員の「非常識な行動」が話題となります。しかし、この議論は何十年も前から続いていることで、今、新人を非常識だと批判している中高年世代は、自身が新人の時は、上司からさんざん非常識だと批判されていました。毎年、同じ事の繰り返しをしているだけなのですが、この連鎖を断ち切るのは難しいようです。

今の若者が非常識なのかはともかく、新入社員に対しては、ビジネスマナー講習などが行われたりすることもしばしばですが、ここで登場してくるのが意味不明のマナー、いわゆる「謎マナー」です。

写真:Shutterstock

お辞儀の角度は45度にする、ビールを注ぐ時はラベルを上にする、リモート会議を終了する時には相手が切るまで頭を下げ続ける、ハンコを押す時には隣の上司にお辞儀をしているように傾けて押す、名刺を渡す時は相手より下の位置で渡すなどなど、ネットを検索すると、謎マナーの例がこれでもかというくらい、たくさん出てきます。

 

謎マナーとして取り上げられているのは、たいていは非合理的で、普通に考えればバカバカしいものばかりですが、現実問題としてこのマナーを強要する人や会社はたくさん存在します。

意味のないマナーを強要することは、社会を非効率にするだけですから、可能な限りなくした方がよいと思いますが、個別の謎マナーについて議論しているだけでは限界があります。一連の習慣をなくし、社会をオープンで風通しのよいものにするためには、なぜ、謎マナーが存在しているのかという、本質的な部分に目を向ける必要があるでしょう。

実は、巷で強要されている謎マナーにはあるひとつの特徴が見られます。それは、上下関係が伴うという点です。

ビジネスマナーというのは、ビジネスにおける人間関係で必要とされるものですから、相手が上司の場合もあれば、対等なパートナーの場合もあります。例えば、「他人が主催するパーティに行く時には、指定の時間より前には行かない」というのは、おそらく万国共通のマナーといってよいでしょう。

相手はパーティの準備をギリギリまでしているはずであり、その最中に顔を出すことは、相手にとって迷惑になりますし、せっかくの晴れの場であるパーティの演出がダメになってしまいます。これは相手が誰であっても同じことですから、立場は関係ありません。

 
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