いまだに年功序列制度が続いている理由


海外メディアは、日本の社会および企業の常識として長年君臨してきた「年功序列制度」にも好奇の目を向けました。無条件に「年上がエラい」というのは外国人の目を通すととても不思議な光景のようですが、そんな慣習が令和に入っても存続し、年配の男性が依然として社会で絶大な権力を握っている理由をこのように分析しています。 

「日本で年配男性が覇権を握っているのは、日本の人口動態の影響も考えられる。日本の全人口の4分の1以上が65歳以上の高齢者で、これは世界で最も高い割合だ。さらに、日本人は他国に比べ、健康で寿命が長い。日本のテレビには、70代や80代になっても第一線で活躍するベテランたちが溢れている。だが時には、そんな高齢者の時代遅れな価値観が主流になってしまうことがあるのもまた事実だ。日本では、年齢こそが他のあらゆる素質を上回る最大の物差しとみなされていることが多いのである」

「時代遅れ」になる恐れがあっても、なかなか年功序列制度がなくならないのはなぜか? その原因についても言及しています。

「日本で年功序列制度が続いているのは、安心感が得られるからだ。労働者たちは、年功序列制度をキャリアの道しるべとしている。さらに、彼らは子供の頃から年齢による上下関係を徹底して教え込まれているのだ」

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年功序列を変える動きが、コロナ禍のおかげで加速


年功序列制度の根深さを伝える一方、この膠着した状態が徐々に変わってきていることも報道しています。

「日本は新型コロナウイルス感染症のパンデミック以前から外国人労働者を多く受け入れるなど、悪名高い島国根性を緩和しはじめている。とはいえ、功労者に報いたり、若い世代に新たなアイディアを試すチャンスを与えたりしなければ、日本は才能ある一流の人材を確保するのに苦労するだろう。世代が続いていけば、年配の世代から受け継いだ世界を、若者たちが作り変えていくにつれ、日本社会は静かに変わっていくのではないか」

 

その変化は、若者が連携して社会をひっくり返すようなダイナミックなものではなく、とても穏やかで、個人個人が新しい生き方を選択した結果としてあらわれるものであると、『若者は日本を変えるか─世代間断絶の社会学』の共同著者ゴードン・マシューズ教授の見解を通して伝えています。

「マシューズ教授は、結婚を選ばない女性が記録的に増加していることや、若者たちが企業に就職せず、フリーランスでのキャリアを追求していることを挙げる。『誰かが計画したわけではありません。若者たちが、親たちの世代とは違う生き方をしようと決めているのです。若者一人一人の決断の積み重ねが、世代をめぐる変化となって現れたのです』」

さらに、この緩やかな変化を後押ししているのが、皮肉なことにコロナ禍であるとも。和光大学の学生・福田和香子さんのコメントを通してこの事実を伝えています。

「私たちは意見を言ったり、声を上げたりするよう教育されてきませんでした。しかし、人々が家で過ごす時間が多くなったため、SNSに時間を費やすようになりました。SNSは、私たちが意見を発信する場となっているのです。私たちにふさわしい場所はすでに存在しています。そしてその世界は、若者たちが統治する世界なのです」

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『海外メディアは見た 不思議の国ニッポン』
編集:クーリエ・ジャポン 講談社 990円(税込)

「なぜ日本人は銀メダルを取ったのに、謝罪するのか?」「働き過ぎなのに、労働生産性が低い理由」など、海外メディアを通して報じられた日本の不思議な現象を紹介。ハッとさせられる記述が多く、自分たちの考え方や習慣を見直すきっかけにもなるでしょう。
 


構成/さくま健太
 

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