皆さま、こんにちは。
元柔道家で現役建築系学生の吉澤穂波です。
柔道選手時代に経験した“武者修行”についてミモレで短期集中連載させていただく機会をいただき、今回で4回目の連載となります。
23歳の夏に一人ヨーロッパへ武者修行に出かけた私は、ヨーロッパ中の強豪選手と合宿をし、ドイツで開かれた国際大会に飛び入り参加し3位に入り、スロベニア人柔道選手たちと友情を育み、当初の想像を上回る、充実した武者修行生活を送っていました。
しかしそれだけではなく……私は、恋に落ちてしまったのです。

柔道漬けの武者修行生活でいつ恋に落ちたのか? それは、前回お話しした、ドイツでの国際大会でした。
私は見つけてしまったのです。
憧れの、J選手を!
―――――――――
J選手との出会いは、大学生の時にさかのぼります。
私の大学柔道部の恩師は、元五輪メダリストかつ名指導者として有名で、その先生を慕って、海外から選手・チームが指導を受けに来ていました。J選手はその中の一人。
ある日、J選手が所属するチームの歓迎会でのことです。J選手が私に近寄り話しかけてきました。
「名前はなんていうの」
「僕の横に座って」
「君はとてもきれいだ」
げっっ、なにこの軽い人! でもお客様をないがしろにできないし……と会話を続けていたところ、お酒も入ったJ選手は
「僕の国では、ビンの中のお酒を全部注いだら『結婚していいわよ』っていう意味なんだよ」
「ずっと僕の隣に座っていて!」
「君は僕と結婚しなくちゃいけない」
と、腕をつかんでくるではありませんか!
見かねた先輩が「ほなみちゃーん、こっちを手伝って!」と助け船を出してくれ、その場を離れました。
なんて失礼な人なんだ!! それがJ選手の第一印象。
でも、その印象はすぐに変わりました。J選手が練習する姿、― 激しくぶつかり合う姿と、真剣なまなざし ― を見て、「かっこいい……」と思ってしまったのです。

――――――――
そんな経験から数年。J選手とはもう一生会わないし、私のことを覚えてもいないだろうと思っていました。
でも、覚えていてくれていたのです。試合会場で私を見つけ、話しかけてくれました。
「ホナミ!! なぜここにいるの?」
「会えてとってもうれしい」
「3位になっていたよね。強い選手がたくさん出場していたのにすごいよ」
私は、世界で勝つ力をつけるために一人でヨーロッパに来たこと、スロベニアの選手たちと一緒に練習していること、とても楽しい“武者修行”をしていることを話しました。
まっすぐ私を見て話を聞いてくれていたJ選手。
「大会が終わったら、カフェに行かないかい?」
- 1
- 2
1