「判断基準」に基づく言葉選び③:顧客を動かす
最後に、接客や営業など、顧客に購買を促したい場合はどうでしょう。
外的基準型のお客さんには、「これは人気商品で、あと1着しかないんです!」「お客様にはこれがお似合いですよ!」といった言葉がよく響きます。逆に、「どんなものをお探しですか?」という問いかけへの反応が鈍いことがあります。自分では決められないタイプなので、選ぶ基準を聞かれても困ってしまうのです。
逆に内的基準型のお客さんには、「人気商品」や「お似合い」といった言葉は響きません。買う商品を決めるための基準は、お客自身の中にあるからです。このタイプの購買意欲を高めるのは難しいですが、有効なのはやはり「あなたに委ねる」という姿勢。「どんなものをお探しですか?」とその人の基準をしっかりヒアリングして、それに合致した商品を選ぶ。または、「こんな商品も、あんな商品もあります」と選択肢の豊富さを示し、「お客様のお好みに合ったものをお選びください!」「ご検討ください」という勧め方が響きやすいです。
ちなみに、初対面のお客さんの判断基準がどちらかを見極めるのは、なかなか難しいですよね。先ほどのような質問を投げかけるわけにもいかないですし。そんな場合、実際に会話をする中で、使う言葉の傾向を判断していくことになりますが、接客を始める段階では分かりません。
その場合は、まず片方のパターンの言葉で話しかけてみて、反応が悪かったら切り替えるというテクニックが使えます。例えば、まずは外的基準型を想定して「この人気商品がお勧めです!」と声をかけ、響かなそうなら「どんな商品がお好みでしょうか?」と、内的基準型向けの接客に切り替えるのです。
* * *
日頃から、仕事やプライベートで関わる人の使う言葉に耳を傾け、身の回りの人に響きやすい影響言語を把握しておくと、このように思わぬ局面で効果を発揮することがあります。
著者プロフィール
牛窪万里子(うしくぼ・まりこ)さん
大学を卒業後、大手飲料メーカーに入社。その後、NHKキャスターに転身。11年間NHKの報道・情報番組を担当した後、フリーアナウンサーとして活動。CS朝日ニュースター政治討論番組、テレビ東京情報番組、TOKYO FMなどを経て、現在はラジオ「身近なことからSDGs」(全国12局)出演中。その他、大手企業を中心にコミュニケーションをテーマにした講演活動を全国で行っている。著書に『初対面の相手も、おもわず本音をもらすアナウンサーの質問レシピ』(総合法令出版)、『仕事ができる人は「声」が違う!』(すばる舎)、『なぜか好かれる人の「言葉」と「表現」の選び方』(明日香出版社)など。
『難しい相手もなぜか本音を話し始めるたった2つの法則 入門・油田掘メソッド』
著者:牛窪万里子 日経BP 1650円(税込)
元NHKキャスターで言葉のプロである著者が、相手の「本音」を引き出すテクニックを具体的な例とともにレクチャー。相手の発した言葉を拾って掘り下げる「油田掘メソッド」、その人に響きやすい言葉を選べる「LABプロファイル」など、上司や部下、顧客はもちろん、身近な人にも活用したいコミュニケーションの攻略法が満載です。オンライン時代にも役立つ、ユニークで簡単な聞き方&伝え方をまとめた一冊。
構成/金澤英恵
Comment