気分が上がるなら20代向けの服でも買う
──『60歳、ひとりを楽しむ準備』(以下、本書)のなかで「好きを隠しているのが面倒になりました」と書かれていたのが印象的でした。以前と比べて他人の評価を気にしなくなったということでしょうか?
そうですね。50代から徐々に自分軸でものを考えるようになった気がします。それ以前、それこそ40代の頃は他人からの評価、特に年齢的なことはすごく気にしていました。30代の人と同じバッグやアクセサリーを持ってはいけないとか、年相応に仕立てのいい服を着なければいけないとか。とにかく他人軸で考えていましたね。それでいくと、60代は金かプラチナしか身に着けてないはずなのですが……。
──実際に60代になってみると違っていました?
はい。今、家にあるのは見事なまでに換金価値のないものばかりです(笑)。服にしてもアクセサリーにしても、選ぶ基準は自分の気分が上がるかどうか。その条件に合えば20~30代向けのブランドの服でも買いますし、シニアに焦点を合わせた服であっても、自分の顔がくすんで見える茶やベージュは選ばないようにしています。好きを隠さないという意味では、以前は「少女趣味」と言われるのを恐れて避けていたリバティプリントや花柄をよく着るようになりましたね。
自分に合うと判断する基準
──「好き」と思ったら、無条件に買ったり身に着けたりするのですか?
そういうわけでもないです。仕事のミーティングの場ではかっちりした服を着たりと、TPOは意識していますね。ちなみに、服を購入する際も「好き」以外の基準があります。たとえば、ジャケットやスーツを買うときは、肩幅は36cmにこだわりますね。私の場合、肩幅がそれより大きいと全体的にダボっと見えてしまうので。あとは、どんなにデザインが気に入ってもVネックだけは避けるとか。40代の頃、気に入って買ったのになかなか着ない服がいくつかあって、それがことごとくVネックだったんです。おそらく、自分の顔に合っていないんでしょうね。
──自分に合うか合わないかは、どのように判断されているのですか?
完全に自分基準です。主観と言ってしまえばそれまでですが、鏡を見たときに自分の気持ちが上がるものは「合う」と判断していますね。目にするものが心地よいというのは、心身の健康を保つうえでとても重要ですよね。
余談ですが、私が社会に出たばかりの昭和の時代は、社会全体が男性の価値観に支配されていました。今思えばひとり相撲的なところもありましたが、当時の私は男性と肩を並べて働くには女性性を出してはいけないと思い込んでいて、必死に自分の「好き」を押し殺していたんです。今はそういうところに余計なエネルギーを使わなくていいので、すごく楽になったと思います。
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