大河『鎌倉殿の13人』はなぜこれほど面白いのか。歴史オンチもどハマりさせる三谷幸喜脚本の魅力_img4

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2人目は、気高くも儚きプリンス・源義高(市川染五郎)です。父・木曽義仲(青木崇高)の仇敵である以上、いつか自分の首を狙ってくる。そう警戒した頼朝によって命を狙われた義高は、鎌倉から逃亡する。しかし、周囲の助けも虚しく追っ手に見つかり、その場で首をはねられた。この義高の悲しき命運は史実通り。三谷幸喜の才が光るのは、その筋書きです。

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義高の助命を願う政子は、義高を伊豆山権現へ逃そうと計画。義高が逃げる時間を稼ぐため、義時は逆方向の信濃に追っ手を向かわせます。しかし、義時への不信感から義高は独断で信濃へ逃走。その結果、追っ手に見つかるという悲運に見舞われたのでした。もしも義高が義時を信じることができれば、逃げおおせたのかもしれない。もしもあと少し発見されるのが遅かったら、大姫(落井実結子)の嘆願によって命は助かったかもしれない。でもすべては後の祭り。もしも願いが叶うなら吐息を白いバラに変えるより義高を助けてあげたかったです。

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そして3人目は、全日本悲劇のヒーロー選手権チャンピオン・義経(菅田将暉)です。歴史に疎い僕でも、義経が兄・頼朝に討たれたことは知っています。平家滅亡の立役者が、なぜ謀反人に一転したのか。年表を追っているだけでは見えてこないドラマを、三谷幸喜は鮮やかに浮かび上がらせていきます。

 

要はこの2人、面と向かって話しさえできれば、こんなことにはならなかったのです。弟はただ純粋に兄を慕っているだけ。なのに、とる行動すべてが裏目に出て、どんどん兄は不信感を募らせていく。もうね、すれ違いに次ぐすれ違い。『東京ラブストーリー』のリカとカンチでもこんなにすれ違わなかったつーくらいすれ違ってる。

思えば、頼朝と義経が最後に話をしたのは、義仲討伐に向かう直前でした。頼朝は「黄瀬川のほとりでお前と再会してから今日に至るまで、じっくり2人きりで話したことはなかったな」と惜しんだ上で、「戦から戻ったら、語り尽くそうぞ」と声をかける。そんな兄の言葉に感激し、義経は「いかにして義仲を倒したか。いかにして平家を滅ぼしたか。夜を徹して兄上にお話しする日を夢見て、九郎は戦ってまいります」と誓います。

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こんな果たされぬ約束をぶち込んでくるところが、三谷幸喜が三谷幸喜たる所以。結局、義経は最後までその約束を心に残したまま自刃。帰りたくて仕方なかった鎌倉へ無言の凱旋を果たします。物言わぬ弟に、兄は「よう頑張ったなあ。さあ、話してくれ」と語りかける。頼朝も覚えていたのです、あの日の約束を。でも、できなかった。もう苦しすぎて、頼朝と義経だけで『朝まで生テレビ!』とかさせてあげたい……!