生活の糧を確保しながら、二足のわらじで会社を経営


起業をするにあたって、ある言葉が頭の片隅にありました。

「男性の起業家には、裸一貫から借金して、とか六畳一間のアパートに住んでガムシャラにスタート、という人もたくさんいるが、女性はどちらかというと現実的。生活が全てかかった状態で起業すると、必要以上に追い込まれた気持ちになり、長期間トライアンドエラーを続けるのが厳しい。経済的基盤は最低限確保しつつ、事業を始めたほうが精神的には安定する」というアドバイスです。

激務の会社員時代にも、休日や早朝、休み時間を使ってブラジャー作りの交渉をしていたので、業務量がもう少し落ち着いた仕事であれば両立できるイメージがありました。そこで、14時半~23時が定時の商社の夜間事務を選び、生活費を確保したうえで午前中はブラジャーの商品開発という二足のわらじを履くことにしたのです。

結果的に、これは私にとても合っていて、メンタルがとても安定し、安心して本業に打ち込むことができました。起業した当初はブラジャーの売り上げはほとんどありませんでしたが、副業があることで、贅沢をしなければ暮らすことができました。

それだけでも、お金の心配をしすぎずに長期戦でいこうという前向きな気持ちを持つことができました。

貯金200万円で大企業を辞めるのを躊躇わなかった理由。午前は起業準備、午後は派遣社員に?_img2
 

そして、いよいよ本格的に商品生産のため動き始めます。

理想通りにはいかなかったサンプルを見て、私の求めるノンワイヤーブラを作るために、割高だとしても日本国内の工場に頼もうと決意します。そこで国内の工場やアパレル商社にどんどん問い合わせて話を聞いていきました。個人としてアポを取るよりも、法人になったことで、話を聞いてもらえるチャンスが広がったように感じました。

 

そんな中、とあるアパレル商社を訪問したときに、有名な下着ブランドの立ち上げに携わった方と出会います。

「ノンワイヤーで、おしゃれで、ストレスなく着けられてテンションが上がるブラジャーを作りたい」とお話しするうちに、とても興味を持ってくださいました。

その後、ノンワイヤーブラの設計に精通したデザイナーを紹介してもらい、本格的に商品の開発がスタートしました。一世を風靡するような商品の設計経験もあるベテランのデザイナーでしたが、昔は同じようにデザイン性の高いノンワイヤーブラの構想を抱いていたものの、その時点では流行や、素材の関係で実現できなかったとのこと。時を経て、私が同じように夢を語ったことで、縁を感じてくださったというのです。

やってみるものだ、アタックしてみるものだ、と思いましたね。

結果的にその出会いが、大きく、私の運命を変えることになりました。

次週予告 6/15(水)公開予定ついに商品が完成、受注を開始するも…!?

株式会社ashlyn代表
小島未紅さん
立教大学法学部卒。新卒で大手SIer企業に入社、SEとしてキャリアをスタート。自身の悩みから、ワイヤーがなく、デザイン性の高いブラジャーを作りたいと思い、会社員のハードワークの傍ら開発をスタート。株式会社ashlynを設立。2017年、日本で初めてのノンワイヤーブラ専門ブランド”BELLE MACARON”をプロデュース。2018年11月に『24hブラ』を発売。2021年7月には日商2000万円を達成。
▶ウェブサイト https://www.ashlyn.co.jp/
▶Twitter @milkonPANDA
▶Instagram @belle_macaron
取材・文/佐野倫子
構成/山本理沙
写真提供/小島未紅さん

 

貯金200万円で大企業を辞めるのを躊躇わなかった理由。午前は起業準備、午後は派遣社員に?_img3
 


前回記事「残業中、深夜にトイレに駆け込んで...「女性の悩み」から始まった大手会社員の起業」>>