「トメ」とは何か? 知られざるクレジットの秘密


ここで改めてクレジットについて簡単に説明すると、最初に登場するのが主役。これを「トップ」と呼びます。そして、その次に登場するのがおおもむね準主役。そこからしばらくキャストの名前が続き、多くの場合、それまで単独で表示されていた名前が、複数同時に表示されるようになります。これを「連名」と呼び、比較的小さい役やキャリアの浅い俳優がここに名を連ねます。

その後、エキストラなどのクレジットが表示され、最後にまた単独で名前が表示されるように。これを「トメグループ」と呼び、いわゆるベテラン俳優がこのグループにまとめられます。そして、全キャストの中で最後に表示されるのが「トメ」。出演者の中で最も大御所がここにクレジットされます。

場合によっては、本来は準主役のポジションだけど、あえて「トメ」にクレジットされることも。最近で言えば、『大豆田とわ子と三人の元夫』の松田龍平や、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』の町田啓太などがそのケース。俳優オタクにとっては、推しが主役を張るのも感無量ですが、推しがトメにクレジットされるのもなかなか感慨深いものがあったりします。

また、連名が続いたあと、一度、単独で名前が表示されて、そのあとまた連名が続くという例も。この単独で表示されたキャストを「中軸」と呼び、本来は「トメ」クラスの俳優だけど、役柄上、「トメ」に置けない場合の優遇措置として「中軸」が用いられます。今期で言えば、『やんごとなき一族』の倍賞美津子がその典型。この「中軸」に倍賞美津子のような大女優が来ると、ぐっと重厚感が増すのも、クレジットオタクにとってはたまらないポイントです。


クレジットに注目!大河ドラマの邪道すぎる楽しみ方


そんなクレジットの醍醐味を最も味わえるのが大河ドラマです。日本のドラマで最も出演者が多く、最も豪華キャストが揃う大河ドラマは、クレジットを見るだけで壮観。何はなくとも並びを気にするのが芸能界。大物俳優ひしめく大河ドラマのクレジットには、制作者の配慮と気苦労がにじみ出ているのです。

写真:NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』 公式HPより

そこで、現在放送中の『鎌倉殿の13人』を例にクレジットの妙味を解説してみたいと思います。まずトップは北条義時役の小栗旬。二番手はヒロインである八重役の新垣結衣が固定です。序盤は北条政子役の小池栄子が続いていましたが、源義経役の菅田将暉が登場して以降は、菅田将暉が三番手、小池栄子が四番手でフィックス。その後、回によって江口のりこ、中川大志、片岡愛之助といったメンバーが続きます。この先頭グループは主に若手がメイン。

 

その後、新納慎也、宮澤エマらは「連名」となり、三浦義村役の山本耕史から再び単独表示に。これを「中グループ」と呼びます。出演者の多い大河ドラマではこの「中グループ」もかなり豪華。主に中堅どころの俳優がここに並びます。しかも、この「中グループ」でも明確な序列がつけられているのです。