江戸時代後期の浮世絵師・葛飾北斎(1760-1849)の作品を多く所蔵・展示する東京・すみだ北斎美術館で、「北斎の描いた鬼」を特集したユニークな特別展「北斎 百鬼見参」が開かれます。

「その筆、鬼神のごとし。」(本展キャッチコピーより)という北斎が、どのように鬼を捉え、表現してきたかに迫る魅力あふれる展覧会です。展覧会の図録で一般書籍としても販売される『北斎 百鬼見参』から、その一部をご紹介します。

 

恐れるか、戯れるか。鬼の姿いろいろ
 

古来、日本人は鬼の存在を信じ、共に生きてきました。古典や芸能、また江戸時代に起こった読本(よみほん)などを題材とする浮世絵にも、鬼は数多く登場します。

『釈迦御一代記図会』六 暴悪を罰して天雷流離王が王宮を焼君臣を撃殺す図(通期展示) 葛飾北斎 すみだ北斎美術館蔵

北斎が挿し絵を描いた仏伝の読本の一見開き。雷神は鬼の姿で雷太鼓を背負って現れます。雲に乗っていることが多い雷神ですが、北斎は雷獣に乗る姿を描き、頬のこけた険しい形相で迫力があります。大胆な画面構成も見どころです。

「風流おどけ百句 不承知な下女はひたいに二本あて」(通期展示) 葛飾北斎 すみだ北斎美術館蔵

北斎の小判錦絵「風流おどけ百句」シリーズからの一枚。下女に不埒なことを迫る主人に、誘いを断る下女は額に指を当てて「そんなことをするとおかみさんの角(つの)が出るぞ!」と脅しているのでしょう。こんな形の鬼もいますね。

添えられた川柳は「不承知な 下女は額(ひたい)に 二本あて」。角は嫉妬や怒りを意味するものとして、広く浸透していたようです。

「道成寺図」(前期展示) 葛飾北斎 すみだ北斎美術館蔵

北斎が能の「道成寺」を描いた貴重な肉筆画。肉筆画とは浮世絵版画ではなく紙や絹に直接描いた絵のことで、この絵は紙本です。鬼女(きじょ)の面をつけて蛇体に扮した“後シテ”が、シテ柱に巻き付く緊張感あふれる場面。面とは思えない生々しい顔の表現です。

この図がすみだ北斎美術館で公開されるのは初めてで、今回の展示のために本紙部分の修復と掛け軸表装の改装が行われました。書籍『北斎 百鬼見参』では、修復のようすを特別コラムで読むことができます。「修復前・修復後」の違いにも注目です。

図録『北斎 百鬼見参』p.98-99より


ちょっと「お宅拝見!」

北斎アトリエ(再現模型) 撮影:尾鷲陽介

すみだ北斎美術館のAURORA(常設展示室)には、北斎のアトリエが再現されています。生涯に約90回の引っ越しをした北斎が84歳の頃に住んだ借家のようすで、左は娘の阿栄(おえい・葛飾応為とも)。北斎は、絵を描くのも人と会うのもこたつに入ったままだったとも言われます。特別展「北斎 百鬼見参」を鑑賞したら、北斎先生と阿栄さんにも会ってみませんか。


さまざまな鬼の姿を探し、楽しむ「北斎 百鬼見参」展


神話・伝説からアニメやゲームまで、日本人にとって鬼は今でも身近な存在です。夏の一日、北斎やその弟子たちが描いた「鬼」が集結する、迫力ある展覧会を楽しむのはいかがでしょうか。恐ろしい鬼、哀しい鬼、愛らしい鬼、まさに「百鬼見参」です。

会期:2022年6月21日(火)~8月28日(日)
※前後期で一部展示替えを実施。
前期:6月21日(火)~7月24日(日)
後期:7月26日(火)~8月28日(日)
会場:すみだ北斎美術館(東京都墨田区亀沢2-7-2)
開館時間:午前9時30分~午後5時30分(入館は5時まで)
休館日:毎週月曜日 
※ただし7月18日(月・祝)は開館、翌19日(火)は休館

公式図録発売中!『北斎 百鬼見参』
編著:すみだ北斎美術館 定価:2640円(税込)
講談社 刊

展覧会出品作の他に、参考図版も満載した公式図録。展覧会公式図録としてすみだ北斎美術館ミュージアムショップで販売の他、一般書籍なので、全国の書店、インターネット書店でも購入できます。

チケット読者プレゼントのお知らせ
5組10名様に特別展「北斎 百鬼見参」鑑賞券をプレゼント

東京・すみだ北斎美術館で開催される、特別展「北斎 百鬼見参」(2022年6月21日~8月28日)の観賞券をプレゼントいたします。

応募締め切り:7月8日(金)〜11:59まで
●応募にはmi-mollet(ミモレ)の会員登録(無料)が必要です。
●プレゼントのご応募は、1回までとさせていただきます。
●当選者の発表は賞品の発送をもってかえさせていただきます。

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構成/からだとこころ編集チーム