重要なのは、男女間で恋愛事情に違いが生じており、その原因の一つと考えられるのが、男女間の経済格差であるという点です。女性からすれば、経済的に不利である以上、男性に対して経済力を求めてしまうのは仕方のない事ですし、一方、男性は男性で、昭和時代のような「男が家族を支える」という価値観に馴染まない人も増えているはずです。

全員が等しく機会を得られる社会であれば、恋愛や結婚の多様化を妨げるものはなくなりますから、自分が望む相手と交際できる(あるいは交際したくなければ交際しなくてもよい)と考えられます。白書が主張したいのは「機会の多様化が必要」という話ではないでしょうか。

白書では、これ以外にも、データを駆使して、様々な事実を提示しています。

男女間の経済格差の根底には、「夫は外で働き、妻は家庭を支える」という価値観が影響している可能性が高いわけですが、この価値観は「日本の伝統」であると勘違いしている人はかなりの数に上ります。しかし日本の歴史を遡ってみても、女性が仕事をせず、家にいるのが当たり前だった時代はほとんど存在していません。

女性の労働参加率は大正から昭和にかけての戦前期は50〜55%台で推移していますが、戦後もおおよそ50〜55%台のままです。明治時代は参加率がさらに高く、逆に1970年代には45.7%まで下がったことがありますが、この時期は高度成長を経て豊かになり、専業主婦が増えたことが原因と考えられます。


しかしながら、全体を通してみれば大きな変化とはいえず、基本的に日本は男女ともに、仕事に就くのが当たり前の社会であることが分かります。つまり「妻は家を守るもの」というのは、特定の人たちが作り上げた一方的なイメージである可能性が高いと考えられます。

 

また、離婚率についても、時代によって上下変動があり、2002年には戦後として最高水準となりましたが、その後、離婚率は低下する一方ですし、しかも、明治時代に至っては今の2倍も離婚率が高いなど、少なくとも、最近になって離婚が増えているとは、到底、判断できません。一部の論者は、伝統的な家族の「絆」が失われており、離婚の増加はその事例のひとつだと主張していますが、「絆」云々はともかく、現代になって特段、離婚が増えているわけではないのです。


白書にはこうした事例がたくさん掲載されており、家族というのは一体、どのような存在なのかを再認識できるよい機会だと思います。ページ数が多く、読みこなすのは少し大変かもしれませんが、時間があれば、皆さんもぜひチャレンジしてみてください。

内閣府 男女共同参画局 男女共同参画白書 令和4年版
「特集編 人生100年時代における結婚と家族~家族の姿の変化と課題にどう向き合うか~」(pdf) 
 

 


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