「一生の記念になったね」何気ない一言に傷ついた理由


CAになって最初の数年は、あっという間に過ぎていきました。見るもの聞くもの全てが新鮮。先輩のあとをついて世界中の街を歩き、ぐんぐん新しい情報を吸収していきます。

そんな中、同僚の前で何気なく描いた仲間の似顔絵が評判を呼んだことから、会社で「NOKOは結構、絵がうまい」と言われるように。それをきっかけに社内報でイラストを描くようになったと言います。

「社内報も結構な部数を印刷しますから、嬉しいなあ、と思って描いていました。するとそれを見た広報の方から、『今度、会社として旅の英会話の本を出すから、その本のイラストを描いてくれない?』と依頼がありました。それまではボランティアで描いていましたが、その時はちゃんと業務として、広報部で2週間缶詰にされ(笑)、朝から晩までイラストを描きました。時給が出ていると考えれば、これが初めて、絵でお金をいただいた瞬間ですね。嬉しくて嬉しくて、張り切って描きました」

「結婚して辞める前に、いい記念ができたね」CA時代、上司の一言に傷ついた経験が私の転機になった_img2
 

本が出版された時には、制服を着て、書店でプロモーション広報活動も任されたそう。小さい頃から描いたもう一つの夢が近づいたような気がして、感激しきりだったそう。でもそこで掛けられた言葉に、ショックを受けたと言います。

 

「会社の皆さんが、慰労会を開いてくださって。そんな機会も滅多にありませんから、本当に嬉しかった。でも、その時、上司が何気なくおっしゃったんです。『良かったねえ、結婚して辞めちゃう前にとってもいい一生の記念ができたね』って。もちろんその言葉は私を労ってくださった言葉なのですが、当時の私には凄くショックで、深く傷つきました。私にとって、イラストってこれっきりの記念にしてしまっていいの? って。こんな楽しいこと、1回だけで本当にいいの? そこから自問自答が始まりました」

次週予告 7月20日公開予定かすかに開きかけた、イラストを仕事にするという夢への扉。次回は、NOKOさんがイラストレーターとして始動しつつ、CAと二足のわらじ生活に至る経緯をお伺いします。
イラストレーター
NOKOさん
1960年生まれ、石川県金沢出身。18歳で単身アメリカに渡り、語学学校に通う。帰国後、大手航空会社のCAに。10年間フライトをした経験をユニークなイラストで描き、人気を博す。著書『NOKOの笑うCA』
▶Twitter:@NOKO64624906
取材・文/佐野倫子
構成/山本理沙
写真/高山浩数さん
イラスト・スナップ写真提供/NOKOさん

 

「結婚して辞める前に、いい記念ができたね」CA時代、上司の一言に傷ついた経験が私の転機になった_img3
 


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