昨年、日本中を席巻したヤンキー漫画『東京卍リベンジャーズ』。「日和ってる奴いる? いねぇよなぁ!!?」というキャッチーな名セリフや、ヤンキー漫画にSF要素を掛け合わせた物語の斬新さ、そして漢気あふれるヤンキーキャラたちにどハマりした方も多いのではないでしょうか。

作者は和久井健先生で、実は2015年に映画化もされた『新宿スワン』と同じ漫画家さんってご存知でしたか?

アツい男の世界、そして不良や裏社会を舞台にしたダークヒーローを描かせたら日本一! 今回は、そんな和久井健先生の原点にして手腕が光る『新宿スワン』についてご紹介します。

『新宿スワン』(1)(ヤングマガジンコミックス)


舞台は新宿歌舞伎町、知られざるスカウトマンの世界


突然ですが、皆さんスカウトマンという職業をご存知ですか?
芸能界で活躍するスターの原石を発掘する“スカウトマン”も存在しますが……。

 

『新宿スワン』で描かれるスカウトマンとは、女性を水商売や風俗、AVといった夜の世界へと勧誘する“スカウトマン”なのです。

 

そんなスカウトマンとは全く無縁の生活を送っていた白鳥龍彦(タツヒコ)ですが、真虎(マコ)と出会ったことをきっかけに、歌舞伎町を拠点とするスカウト会社「バースト」に入社。歌舞伎町の闇、そしてスカウトマン業界の派閥や抗争に身を投じていくことになります。

 
 


その姿はダークヒーロー、タツヒコという救い


『新宿スワン』で描かれるのは、おそらく世の中の大多数の人が“普段見ることのない世界”です。

 

その仕事の性質上、なかなか明るみにならないスカウトマンというお仕事。ですが、本作では、水商売や風俗、AV、そして闇金やヤクザといった業界との取引や抗争を通して、スカウトマンという仕事をどこまでもリアルに描きます。

 
 
 

時には、そのあまりの過酷さに目を背けたくなるシーンもありますが、唯一の救いがタツヒコの存在です。

 

人の道から外れる行いは絶対に許さないという、一本筋の通った性格。裏社会と隣り合わせなスカウトマンという世界で誠実に、そして誰かを守るために強く在ろうとする彼の姿はまさにダークヒーロー。どんな状況に身をおいても、権力や暴力に決して屈せず、自分が掲げる正義に基づいて行動をする彼の姿はとても魅力的に映ります。


曲者だらけの登場人物たち!その裏に隠れた男たちのドラマに注目


そして、『新宿スワン』を一層盛り立てるのが曲者だらけの登場人物たち。

 

まず、タツヒコがスカウトマンになるきっかけとなったマコ。一見すると爽やかで優しそうですが、笑顔で恐ろしいことを言い出したり、何やら裏で手を引いていたり……。何かと読めない性格です。

関さんこと関玄介(せきげんすけ)は、タツヒコが務めるスカウト会社「バースト」の幹部。とにかくガサツで口が悪い!ですが、実はタツヒコと同じくらい一本筋の通った頼れる兄貴分的存在です。

 

曲者にしてコワモテキャラが勢揃いの『新宿スワン』。ですが、スカウトマンの縄張り争いで垣間見える、彼らの友情、漢気に思わず胸がアツくなります。また、読み進めていくうちに『新宿スワン』特有のこの“乾いた眼差し”からギラついたような魂を感じてしまう不思議……!

 

『東京卍リベンジャーズ』で和久井健先生を知った方からすると、その世界観、そして絵の違いに驚く方もいらっしゃるかもしれません。

ですが、誰かを守りたい、誰かのために強くなりたいという、どこまでも真っ直ぐなタツヒコの姿は『東京卍リベンジャーズ』のタケミチと重なる部分があるのではないでしょうか。

ぜひ、2作品読み比べながら、和久井健先生が描くアツい男の世界を堪能してみては?

「日和ってる奴いる?」の元ネタ『東京卍リベンジャーズ』従来のヤンキー漫画像を覆す緻密なストーリー>>

 

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『新宿スワン』
和久井健(著)

スカウト会社“バースト”の見習い社員となった白鳥(しらとり)タツヒコ、19歳。街角でギャルに声かけて、お水のシゴトを斡旋(あっせん)し、紹介料でメシを食う。そんな歌舞伎町ディープビジネスの世界に飛び込んだ彼を待っていたのは、何よりもカネがモノをいう弱肉強食の掟だった……!! 日本最大の繁華街の雑踏に立ち、覗き込んだ裏社会のリアル。歌舞伎町のスカウトほどサイテーで最高な商売はない!!


<作者プロフィール>
和久井健

2004年『新宿ホスト』で第293回ヤングマガジン新人漫画賞佳作を受賞。その後、2005年から「週刊ヤングマガジン」にて『新宿スワン』を連載。2015年には「週刊少年マガジン」で『デザートイーグル』を連載。2017年から『東京卍リベンジャーズ』を連載中。