月に100冊以上漫画を読むほど漫画が大好き! そんな、漫画をこよなく愛する私が唯一「そんなわけあるかい」と、ツッコミを入れざるを得ないタイプの作品があります。それが少年誌ラブコメ。

ツッコミを入れたことがある、なしの経験は置いておいて……。そもそも「mi-mollet(ミモレ)」読者さんの中には、少年誌ラブコメの大ファンだという方は少ないのではないでしょうか。だけど、私の「そんなわけあるかい」を崩し、そんなみなさんにも激推ししたいくらい、最高な少年誌ラブコメがあるんです!

その名も『それでも歩は寄せてくる』。「週刊少年マガジン」で連載中のれっきとした少年誌ラブコメですが、なんと2022年7月7日からアニメがスタートするほどノリに乗っています。今回は、そんな『それでも歩は寄せてくる』の魅力を少年誌ラブコメで長らく描かれてきた“ヒロインレース展開”と共に解き明かしていきます。


少年誌ラブコメで描かれてきた “ヒロインレース展開” 


『うる星やつら』に始まり、近年では『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』『五等分の花嫁』などもヒット、一大ジャンルを築き上げきた少年誌ラブコメ。

作中に登場する、現実離れした超可愛い女性キャラクターたちは、女性読者の私ですら思わずドキッとしてしまうほど魅力的。あと、少年誌ラブコメというくらいなので、読者である男性からすると、こういう女性キャラクターが理想なのかな……なんて視点で読む面白さもあります。

ですが、その超可愛い女性キャラクターたちがわんさか登場し、たった一人の男性に選ばれるためにアタックしまくる……。そんな“ヒロインレース展開”が始まると、ちょっとついて行けない時があるんです。

誰が選ばれるのかわからない! という、ちょっとした乙女ゲームに似たドキドキ感は楽しいかもしれない。だけど、可愛い女性キャラクターたちが、一人の男性のためにあの手この手を使って頑張ったり、時にはライバルたちと衝突したりするのを見ていると、心穏やかではなくなってくるし、こう言いたくなってしまうのです。「そんなわけあるかい」と。

 


『それでも歩は寄せてくる』が描く、NOTヒロインレースな“むずキュン”ワールド

 

そんな、少年誌ラブコメの定番となった“ヒロインレース展開”を一切描かず、それどころか新たなキュンである“むずキュン”ワールドを確立させたのが『それでも歩は寄せてくる。』です。

主人公は将棋部部長・八乙女うるし。将棋は強いけれど、後輩・田中歩の「攻め」にはとっても弱くて「詰む」かもしれない……というお話です。

 

ちなみに、歩はうるしのことが好き。彼女に一目惚れしたことをきっかけに、今までやっていた剣道をすっぱりと辞め、初心者ながら将棋部に入部しました。「将棋でうるしに勝ったら告白!」という決意を胸に、日々棋力を磨きます。

 

歩がうるしのことが好きなのは読者からすると周知の事実。ですが、うるしもまんざらでもなさそう……。1話から「もう付き合っちゃえよ!」感が溢れまくっている『それでも歩は寄せてくる。』ですが、この後もほぼうるしと歩の一対一の日常が続くので、1人の男性のために女性が頑張る“ヒロインレース展開”にならないのです。

 

その代わり、どこからどう見ても好き同士な2人が、絶妙な距離感を保ちながら毎日を過ごす様子に「早く付き合えば良いのに」とむずっとしたり、一方で学生ならではのイベントごとに背中を押され、急激に進展していく2人を見て「キュン」としたり……。唯一無二の“むずキュン”ワールドをお見舞されます。

 


まるで武士! 敬意と礼儀を忘れない歩に注目

 

さらに本作を激推ししたいもう一つの理由が、歩のキャラクター性。美少年でもないし、ビジュアルも一般的だし、正直漫画にしては少々地味な外見だと思うんです。ですが、彼の魅力は好きな人に対して敬意や礼儀を忘れない、その振る舞いにあります。

うるしのことが大好きな歩ですが、彼女は一つの上の先輩……。さらには将棋部の部長として圧倒的な棋力を持つ彼女のことを心から尊敬している歩は、「攻め」の言葉を放つ時も、乱暴な言葉遣いは一切なく決して敬語を崩しません。また、少年誌ラブコメではあるあるな、女性への過度なボディタッチもありません。時には、体育祭や日常でのちょっとした事故で、やむを得ずうるしに触れるシーンなどもありますが、前後では必ず一言詫びるなど、どこか武士っぽい誠実さを感じるキャラクターです。

しかも、よくよく読み進めていくと歩の「攻め」は、うるしのことをよく見ているからこそ、出てくる言葉なんですよね。歩の「攻め」シーンに着目していると、それがそのままうるしの長所になっていると言っても過言ではないくらい。

少年誌ラブコメでありながら、女性読者にも刺さるほどの魅力で溢れている『それでも歩は寄せてくる』。もしも自分がうるしだったら歩の「攻め」をどう交わすか?……そんなことを考えながら読み進めていくのも楽しいかもしれません。
 

 

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『それでも歩は寄せてくる』
山本崇一朗(著)

「からかい上手の高木さん」山本崇一朗が描く超尊い将棋ラブコメ!この恋、詰むや詰まざるや……? 将棋の初心者・田中歩は部長の八乙女うるしに勝って告白したい。棋力は程遠いけれども、ぐいぐい攻めてくる歩の姿勢に別の意味でセンパイは“詰む”かもしれない……というお話。


山本崇一朗
2008年『歯は上に投げるもの』で第33回イキマンを受賞。同作が「月刊IKKI」に掲載され、漫画家デビュー。2012年に「ゲッサン」で読み切り作品『恋文』を発表し商業誌で本格デビューを果たす。現在は『からかい上手の高木さん』『くノ一ツバキの胸の内』『それでも歩は寄せてくる』を同時連載中。いずれもアニメ化するほどの人気作となっており“ラブコメ旗手”として大きな注目を集めている。
Twitterアカウント:@udon0531