ABEMAオリジナルドラマは、「攻めてる!」と思う作品が多いです。29歳独身女性の葛藤を赤裸々に描いた『30までにとうるさくて』や、若者の性に真正面から向き合った『17.3 about a sex』など……。多くの作品が、地上波ドラマではなかなか見られないタブーに切り込んできました。

そんなABEMAで新たにスタートしたのが、『ANIMALS‐アニマルズ‐』です。本作は、恋も夢も忘れてブラック企業で働く“幸せ迷子のズタボロ女子”・鹿森海(鈴木愛理)が、最高の自分に生まれ変わっていく大逆転ラブストーリー。6月23日の初回配信を観た時、「なんて、リアルなヒロインなのだろう」と胸が苦しくなりました。

ABEMAオリジナルドラマ『ANIMALS‐アニマルズ‐』より


仕事と恋を両立して、自分のケアも怠らない。そんな“全方位完璧女子”もいるのかもしれないけど、大抵の人は取捨選択をしながら生きているはずです。「仕事を頑張らなきゃいけないから、恋にうつつを抜かしていられない!」と宣言してバランスを取ったり、婚活に励むために少し仕事をセーブしたり……。『ANIMALS‐アニマルズ‐』のヒロイン・海も、そんなひとりです。

 

海は、仕事に没頭するあまりに、恋愛やプライベートを捨てて生きてきました。「(良さげな人と)出会っても、時間がない、休みがない」ために振られてしまう。スキンケアをする時間さえ“もったいない”と感じるほど多忙を極めていたら、ついに乳液が分離していることが判明! 「なんだ、このリアルなたとえは……!」と思った人も多いのでは? 

社会に出ると、立ち止まることも許されないままに時間が過ぎていきます。学生時代のように、強制的に“将来”について考えさせられることもありません。目の前の仕事に必死になっていた海も、“自分”と向き合うことを忘れていました。

そんな彼女に転機が訪れたのは、第1話。徹夜が続き、生放送中に居眠りをしてしまった海は、形式上の休暇をもらうことになります。ここで、初めて“どんな自分になりたいか”と向き合うきっかけを得たのです。「もったいないよ。この仕事、好きじゃん」と上司に引き止められた時に、「好きじゃないことにも、気付けなくなっていた」と返した海。この台詞は、SNS上でも「刺さる……」と多くの反響を集めていました。

ブラック企業から脱出した海は、ひょんなことから、最新コスメベンチャー企業「ANIMAL BEAUTY(アニマルビューティー)」で働くことに。イケメン社長・榊圭祐(白州迅)率いるこの会社は、いわゆる令和らしい最先端の社風。上司は、「ちゃんと働くために、ちゃんと寝る」と言ってくれるし、フレックスタイム制も導入。リモートワークも推奨しています。この会社で、海は自分らしく変わっていくことができるのでしょうか。

また、本作のもうひとつの見どころが、海の恋愛模様。お相手候補の一人目・榊は、頭がキレるのに、恋愛には奥手な感じがたまりません……! そして、もう一人は生意気な年下カメラマン・長嶺風緒(本田響矢)。長嶺は、不器用だけど海をまっすぐに想ってくれているのが伝わってくるんですよね。一緒にラーメンを啜ったり、すっぴんでも笑っていられたり……。海が、素でいられる相手は長嶺なのかもしれません。ただ、榊もかなーり魅力的。その榊に想いを寄せているカリスマモデル・風見雛(村上愛花)の存在も、物語をかき乱していきそうです。

がむしゃらに頑張る海を見ていると、とにかくパワーが湧いてきます。そして、“自分”と向き合うきっかけも与えてくれる。この夏、『ANIMALS‐アニマルズ‐』は私たちを鼓舞してくれる作品になりそうです。

 

 


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