病院(病棟)は目的によって4種類
看護師のご友人に言われたように、佳代さんのお父様は転院せざるを得ないと思います。日本の医療は「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」の4つの機能に分けられており、何を目的に入院するかで、入院先と入院期間が変わるのです。
日本の病棟は、命に関わる患者を診る「高度急性期・急性期病棟」が過半を占め、現在約70万の病床(入院者用ベッド)があります。ですが高齢化などによってリハビリや介護などの機能を持つ「回復期病棟」と「慢性期病棟」の需要が高まると国は判断し、地域医療構想の策定を求めて病院の再編を進めてきました。結果的に、重症のコロナ患者を診られるような「高度急性期病棟」は2015年の16.9万床から2021年には15.5万床に減少。代わりに「回復期病棟」が13万床から19.3万床に増えています(厚生労働省の発表より)。
では、4種類の病院(病棟)について詳しく見ていきましょう。
命を助ける「高度急性期・急性期病院(病棟)」
高度急性期病院(病棟):平均入院期間7~10日
病気が始まり病状が不安定かつ緊急性を要する患者に対し、状態の早期安定に向けて高度な医療を提供し、命を助けるための病院(病棟)。救命救急病棟や集中治療室などを備えており、救急搬送されて一命を取り止めたあとは退院や転院の話が出る可能性が高くなります。
急性期病院(病棟):平均入院期間12~14日
病状が不安定かつ緊急性を要する患者に対し、状態の早期安定に向けて医療を提供する病院(病棟)。脳血管疾患(脳卒中)などで倒れた場合は、ただちに急性期病院で命を救うための治療を行います。地域の救急指定病院や救命救急センターでは、急患に備えた体制を整えておくことが欠かせません。
復帰に向けた「回復期リハビリテーション病院(病棟)」
回復期リハビリテーション病院(病棟):平均入院期間60~180日
急性期医療が終了した患者に対し、在宅復帰に向けた集中的な医療やリハビリテーションを提供します。たとえば脳血管疾患や大腿骨頚部骨折などの患者に対し、食事やトイレ、入浴や移動などの日常生活動作の向上をサポート。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などのリハビリ専門職員による個別の訓練を毎日受けることができるのも特徴です。発症から入院までの日数や入院できる期間も疾患や疾病名によって決められています。もう少しリハビリを受けたいと希望しても、難しい場合も想定されるので注意しましょう。
高齢患者の多い「慢性期病院(病棟)」
慢性期病院(病棟):平均入院期間180日~
長期にわたって療養が必要な患者を入院させる機能を備えた病院(病棟)。主に高齢患者に対する栄養管理、QOLの保持、合併症の対応などが行われています。そのほか、長期の療養が必要な重度の障害(重度の意識障害を含む)を持つ患者、筋ジストロフィー、難病患者などを入院させる機能もこれに該当します。慢性期は入退院を繰り返すことが多いステージでもあり、治療後の退院が難しいなど、転院先に悩む社会的入院患者が多いのが現実です。
手厚い看護の病院(病棟)は入院期間が短い?
日本の医療機関における看護職員の人員配置は、医療法によって定められています。これからご説明する数字は、看護職員(看護師・准看護師)が入院患者数に対して何人配置されているかを示すものです。たとえば「7対1」は、看護職員1人あたり7人の患者さんを受け持つこと。「10対1」は、看護職員1人あたり10人の患者さんを受け持つ、という意味です。
看護職員1人あたりの患者数が少ないほど診療報酬の「入院基本料」の評価が高くなります。「7対1」の場合は、平均在院日数(入院期間)が18日以内などの決まりがあるため、手厚く配置する病院(病棟)は入院期間が短くなっています。
緊急を有するものは、高度急性期・急性期病院(病棟)で治療を受けますが、病状が安定すると退院または転院となります。これを追い出されたと思う人も多くいるようですが、ここのベッドは次の緊急患者のためのものです。医師や看護師の感情ではなく、病院の役割上、仕方のないことだと理解しておけば、余計な怒りやストレスを抑えることができます。
リハビリテーション病院は、【回復期リハビリテーション病院 東京】などで検索すると対象の病院が調べられるので、取り組みなど気に入ったところがあれば、転院を受け入れてもらえるか直接、問い合わせることも可能です。
写真/Shutterstock
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
編集/佐野倫子
前回記事「「どこまで上がる?いつまで払う?主婦は払わない?」知っておきたい介護保険料」>>
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