レシートで一円を突き合わせてまで、お金を貯めたい理由


「離婚したい、と初めて告げたとき、夫は取り合ってくれませんでした。しかし、私が再度話し合いを頼んで本気だとわかると、それはもう衝撃を受けた様子でした。多分、あまり自己主張しないタイプの私がそんなことを言い出すなんて思いもよらなかったんでしょう。それまで溜めてしまっていた気持ちを伝えると、彼は赤くなったり青くなったりして動揺していました。結局そのときは、気を付けるから離婚は思いとどまって欲しいと懇願するので、変わってくれることを期待しましたが、数カ月経つとやはり元通り。寝室籠りも変わりませんでした」

日々のレシートチェックは続き、そのくせ自分は共同生活費口座から10万円単位でお金を黙って下ろすという良平さん。しかし不思議なのは、だからと言って何か買い物をしたり、遊んだりしている気配がないことでした。

真弓さんは、何故そこまでお金に執着するのか、そしてコソコソ下ろしたお金はどこに消えているのかを思い切って尋ねました。

「彼は、中学生の頃にお父さんが蒸発して、経済的にとても苦労したというのです。お父さんは亡くなったと聞いていたので、嘘をつかれていたのかと衝撃でしたが、それは置いておいて。

とにかく学生時代はお金がなくて苦しい思いをしたから、貯金がないと怖くてたまらないとのことで、なんと生活費の口座から自分名義の口座にわざわざお金を移して、個人貯金を増やしていたんです」 

「お前が態度を改めるなら...」ケチ夫に妻が突きつけた、痛快な離婚の条件_img0
 

結婚して10年近くが経ってから、初めてきいた彼の本心。真弓さんの胸は痛み、彼を理解することでなんとか二人で軌道修正できないかと、試行錯誤しました。

しかし、その後も良平さんはお金のことになると感情的になり、固執するあまり収入があるほうが上で、少ないほうが家事を多く負担するのは当然という考えを変えることはできませんでした。

 

また、経済的メリットが全てに優先するので、真弓さんの長い通勤時間の苦痛、子どもとの時間を優先して収入に響くのは許せないなど、埋められない価値観のギャップが浮き彫りに。ファミリーレストランに入って、「俺はお金がもったいないから食べない。お前たちはクーポンの中から選びなさい」と水を飲んでいる姿を見て、真弓さんは一度距離を取って冷静にこれからを考えようと決意しました。

数カ月の別居を提案しますが、内心では話し合って埋められるギャップではないかもしれない、と哀しい予感がよぎったと言います。

「別居なんて余計な金がかかる」と憤慨する良平さんに、真弓さんはコロナ禍ならではの提案をしました。