サル痘の感染経路は?予防は?ワクチン接種はどうなる?


現状報告されている感染経路は、性交渉に関連した感染が多いようです。また、今のところ感染者の9割以上が男性で、若い世代に多いと報告されています。ただ、国外を見渡してみると、女性の感染者も報告されています。さらに、感染経路が特定されていないケースもあります。そのため、若い男性にだけ、性交渉に関連して感染が広がっていく病気である、と決めつけることはできません。誰にでも広がりうる感染症である、ということを、同時に認識していただく必要があると思います。

今、日本国内では、コロナウイルスに対してきちんと感染予防対策をされている方がとても多いと思います。そして、このコロナウイルスに対する感染予防対策は、サル痘ウイルスに対しても有効だと考えられています。たとえば、マスクの装着、頻繁な手洗い、手指消毒などです。こうした対策がサル痘ウイルスにも有効である、ということはわかっていますので、続けていただくことが大切です。

サル痘が性感染症と決まったわけではありませんが、その他の性感染症を予防する意味でも、コンドームを使用していただく、不特定多数との性交渉を避けるなど、性感染症予防に有効な対策も、同時に意識していただくとよいのではないでしょうか。予防・対策として、サル痘ウイルスにだけ特別な感染対策が要求されている、という状態ではありません。

ワクチン接種はどんな人が対象になる?


サル痘は、コロナウイルスのように、加速度的に感染が広がることは想定されていません。ですから、今のところは、国民全体に広くワクチン接種を進める必要はないと考えられています。

ヨーロッパの例を見ていると、サル痘に感染した方の診療に当たる医療従事者を中心に天然痘のワクチンを受けていただいているようです。また、濃厚接触でウイルスのばく露があったと考えられる場合には、ワクチンを受けることで、発症や重症化を予防できるのでは、とも言われています。

繰り返しになりますが、サル痘は、コロナウイルスのように、爆発的に感染者数が増えていく感染症ではありません。WHOは緊急事態を宣言しましたが、日本が国家として危機的な状況にある、ということではないと思います。

 

ただ、近い将来はわかりません。
これまで、動物から人への感染は、アフリカに限られていました。けれど、現在は世界中の多くの国で感染者が多数発生している状況です。アフリカ以外の国でも、人から動物にウイルスが感染し、動物がウイルスを持つことになれば、感染のコントロールは難しくなります。

動物との接触は若い男性に限らず、老若男女に起こり得ますよね。それゆえ、様々な動物との接触を介しながら、重症化リスクのあるお子さんや妊婦さんへも感染が広がる可能性を懸念した上で、WHOは緊急事態を宣言したのでしょう。

「サル痘は男性の病気である」、「若い世代だけ」などと、決めつけないことが大切です。お子さんにもリスクがやってくる可能性もありますし、他国で見れば女性の感染者も報告されています。やはり私たち一人一人が、感染拡大をどう防げばよいのか、ということを考える姿勢が大切なのではないでしょうか。

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構成/新里百合子
 

 


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