実は私、パリに来たばかりの頃はこのマルシェがとても苦手でした。一軒一軒、毎回並んで買うのが面倒だし、混んでいるから「この野菜の名前はフランス語でなんて言うのかしら?」なんてやっていると後ろの人やお店の人にイライラされる。
そしてなんと言っても、大概のものはスーパーの方がずっと安いのです! こちらはスーパーもマルシェ同様ほとんどが量り売りなので、自分の好きな量だけ買うことができます。「スーパーでいいじゃん。スーパーがいいじゃん!」と思って暮らしていました。
ところが住んで数ヶ月もすると、新鮮なお魚や旬の野菜はマルシェでないと買えないことがわかり、渋々行くように。そして通いだしてみると、なぜフランス人が安くもないマルシェに嬉々として通うのかが理解できるようになってきました。マルシェは……単なる買い物の場ではない、大いなる社交の場でもあるんです。
例えば、以前八百屋さんで知らない食材について聞いた時。「サラダにするといいよ! ちょっと苦味があるけどね」と言われたのですが、後ろのマダムが会話に入ってきて「それ、苦味って言うより酸っぱいわよ」。八百屋のおじさん「いや苦いよ」マダム「絶対酸っぱいわ」とどちらも一歩も引かないので、「わかりました、食べて検証します〜」と言って、初めての食材を口にするきっかけをもらったことがあります。(ちなみにその野菜は日本で言うスイバで、すごく酸っぱかった。←売り主よりマダムの方が正しかった!)
また、市場内でお花を持って歩いていると、果物屋のおじさんにいつも「あ、僕へのプレゼント?! 受け取るよ、ありがとう〜!」と声をかけられるので、どうしてもクスッとしてしまいます。
語学学校が一緒だった友人はお魚屋さんで、お刺身にすべくお魚をじっと吟味していたところ、後ろの人に「やはり日本人は魚を見る目の真剣さが違うわね。うちのも選んでもらおうかしら」と言われたとか。もちろん、
大した話をするわけではありません。でも、人と会話して、温かみを感じて、何ならお店の人と「じゃあまた土曜日ね〜」と、来週の予定めいた挨拶を交わす。そういった人間らしいひとときを与えてくれるのが、マルシェなんです。
新鮮で良い食材が手に入るから、と言う側面も当然ありますが、安くもないマルシェに皆が通っているのは、人と人との繋がりを求めている部分も多いにあるんじゃないかなと思っています。
前回記事「1万円のお皿が130円?! 本当は内緒にしておきたい「蚤の市」攻略法」>>
- 1
- 2
Comment