ウォン・カーウァイ監督のアドバイスで、自分の人生を振り返った


ウォン・カーウァイとタッグを組んだ『プアン/友だちと呼ばせて』は、白血病で余命宣告を受けたウードと、ニューヨークでバーを経営するバーテンダーの友人・ボスの青春ロードムービー。かつてはニューヨークで一緒にバーを経営する計画があったものの、ウードは直前にタイに帰国してしまいます。その後、二人は疎遠になっていました。

ところが、数年ぶりにウードからボスに電話があり、彼が白血病で余命いくばくもなく、ボスは最期の頼みを聞いてほしいからバンコクに来てほしいと請われます。慌ててバンコクに駆けつけたボスが頼まれたのは、ウードの元カノたちを訪ねるための車の運転手役。元ラジオDJで数年前に他界したウードの父が遺したヴィンテージのBMWに乗って、二人の旅は始まります。カーステレオのカセットテープから流れるのは、父のラジオ番組を録音したもので、父の温もりのある声が届けるのは、エルトン・ジョン、フランク・シナトラ、ザ・ローリング・ストーンズといった懐かしのヒットナンバーでした。

プーンピリヤ監督にとって、雲の上の存在だったウォン・カーウァイが提案したのは、「バケットリスト(死ぬまでにやりたいことリスト)ムービーでいこう」というアイデア。ストーリー作りに難航していたプーンピリヤ監督は、「もっと自分自身を投影したストーリーにしたほうがいい」という新たなアドバイスをもらいます。そこで、自分が最も描きたいものが何かを考えた時に、死にゆく男性が元カノたちに会いに行く、という物語がひらめいたと言います。

『恋する惑星』『花様年華』『天使の涙』などで知られるウォン・カーウァイ監督(左)と、バズ・プーンピリヤ監督

「私は映画やCM製作では常にテーマを与えられ、そのテーマに沿って語る役割を果たしていました。だから、自分自身を投影したほうがいいと言われた時に、そんなに面白いものがあるとは思えなかったですし、かなりのためらいがありました。でも、最終的には決心して、自分の人生は面白いんだと自分を信じ込ませるようにしました」