ふざけたってカッコいいものはある。それが伝わるなら、本望


天海さんはまさにミモレ世代の少し先輩と言える年代。長丁場の舞台に入ることに対して、体力的な不安を感じることはないのでしょうか。


天海:何事も懸念点は考えますが……やる前から心配してもしょうがないですから。何かのトラブルに直面したときに、それをどう回避するか、どうやって決着つけるかとか、どうやって消化するか、納得するかというのを頑張ればいいわけで、始まってもいない、直面してもいないことを心配するのは、その心配するだけの時間がもったいなくない? と思うんです。

問題に直面するまで楽しく過ごせたかもしれないのに、直面する前からずっと心配していたら、心配して過ごす時間のほうが長くなってしまう。楽しく過ごせた時間があったはずなのに、そこをずっと不安と心配で過ごしてしまったら、楽しくできる時間が少なくなっちゃうような気がして。

だから、事前にあれこれ考えたりはしますが、思い悩むことはしないです。体力的なことはしっかりカバーできるように、パーソナルトレーナーについてもらって、ウエイトトレーニングをずっと行っています。そういった“準備”はきちんとするけれど、“心配する”のはその状況になってからでいいかな。

古田:オイラはなーんもしてない(笑)。

天海:古田さんはもう、蓄積された身のこなしがあるから(笑)。

【古田新太×天海祐希】「ベテランだってふざけていい」「準備はしても心配はしない」。実力派の二人が世代交代をあまり意識しない理由_img5

 

では、長い稽古期間と本番を乗り切るための秘訣やオンオフの切り替えはあるのかと聞いてみたところ、ふたりが声を合わせて……。


天海:私たちそんなに。

古田:オイラたちそんなに苦労しない。稽古終わったらスパーンって帰っちゃう。早いよ、ふたりとも。ゆりちゃんはパーンと車乗って帰って、オイラはその足でそのまま飲み屋に行っちゃうから。

 

天海:役を引きずったりすることもありませんね。終わった瞬間にね、「お疲れさまでした!」といって帰る。瞑想? 古田さん、したことある?

古田:迷い走ることはある。迷走。

天海:それはあるね(笑)。毎回いろんなところで迷ってるから(笑)。

天海さんは春に出演された、COCOON PRODUCTION 2022『広島ジャンゴ 2022』に続いて、今年2本目の舞台。古田さんもコロナ禍に入った2020年から、PARCOプロデュースねずみの三銃士『獣道一直線』や劇団☆新感線41周年春興行 Yellow/新感線『月影花之丞大逆転』、ミュージカル『衛生』『ロッキー・ホラー・ショー』と多くの舞台に出演されてきました。感染者数が一進一退を続けるという状況下で“舞台に立つ”という選択は、精神的にも肉体的にもハードなはずです。


古田:広島ジャンゴはどうだったの?

天海:体力的なしんどさで考えると新感線のほうが長いから大変ですけど、ジャンゴは精神的に重かったですかね。新感線はバーッと最後に鬱憤が晴らせるというか、特に『薔薇とサムライ』は終始スカッとさせてもらえるのが嬉しい。でも、どっちの舞台も素敵だし、どっちの舞台も大変です。

古田:オイラはコロナ禍でやった芝居が『獣道一直線』『月影花之丞大逆転』『衛生』で、『ロッキー・ホラー・ショー』でしょ。本当に下品な感じのモノしかやってないわけよ。まあ、これはオイラの使命でもあるし、オイラにとっては薔薇サムだってこの一環でしょ(笑)。こじんまりしたお芝居もいいんだけど、派手でさ、ゲラゲラ笑って観られる、そういうのを若い衆やろうよって思うの。「バカだなー」「あー、気持ちよかった、面白かった」っていうのを、これだけの手練れのベテラン集めてやるんだよ。

天海:真剣にバカをやる、みたいなことですよね。

古田:そうそう。それをね、もっと啓蒙したいと思う。もっとみんなふざけようよって。ふざけたってカッコいいものはあるんだし、それをこれからもやっていきたいんだよね、オイラは。身体が動いて声が出る限り。どんどん歳を取っていったら、オムツ履いてるかもしれない。オムツミュージカルみたいな(笑)。

天海:オムツミュージカル!

古田:ゆりちゃん、今回の『薔薇サム2』が最後の新感線って言ってたけど、4年後に『女王の教室』なんて、どう? 劇団員、全員生徒役でさ。面白いよー、きっと!

天海:考えておきます(笑)。

 
 

古田新太 Arata Furuta
1965年12月3日生まれ、兵庫県出身。劇団☆新感線の看板役者。大阪芸術大学在学中の1984年から劇団☆新感線に参加。エネルギッシュで迫力ある演技には定評がある。劇団公演以外の舞台にも積極的に参加しているほか、自身で企画・主演を務める演劇ユニット“ねずみの三銃士”などもある。活躍の場は広く、バラエティ番組やCM出演、コラムニストとして本の出版も。劇団公演以外の近年の主な出演作品は【舞台】『ロッキー・ホラー・ショー』(22・17・12)、『衛生』(21)、『獣道一直線』『プラン変更~名探偵アラータ探偵、最後から7、8番目の冒険~』(20)、【映画】『KAPPEI』(22)、『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』『空白』(21)、【ドラマ】『俺の可愛いはもうすぐ消費期限⁉(EX・22)、『SUPER RICH』(CX・21)など。現在バラエティ番組『関ジャム~完全燃SHOW』(EX)にレギュラー出演中。映画『空白』により、第43回ヨコハマ映画祭、おおさかシネマフェスティバル2022、第31回日本映画評論家大賞の主演男優賞を受賞。ドラマ「DORONJO/ドロンジョ」(wowow)が10月7日(金)より放送開始


天海祐希 Yuuki Amami
1967年8月8日生まれ、東京都出身。1987年宝塚歌劇団に入団、95年に退団。以降ドラマ・映画・舞台・CMなどで幅広く活躍。近年の主な出演は【舞台】『広島ジャンゴ 2022』(22)、『贋作 桜の花の満開の下』『修羅天魔~髑髏城の七人 Season極』(18)、『子供の事情』(17)、【映画】『老後の資金がありません!』(21)、『私は白鳥』(ナレーション・21)、【ドラマ】『緊急取調室』シリーズ(EX・14‐21)、『トップナイフ‐天才外科医の条件‐』(NTV・20)、『BOSS』シリーズ(CX・09‐21)など。23年2月3日(金)より映画『仕掛人・藤枝梅安』が公開予定。劇団☆新感線には本作が5作目の参加。

<作品紹介>
2022年劇団☆新感線42周年興行・秋公演
SHINKANSEN☆RX『薔薇とサムライ2-海賊女王の帰還-』

【古田新太×天海祐希】「ベテランだってふざけていい」「準備はしても心配はしない」。実力派の二人が世代交代をあまり意識しない理由_img8

 

作:中島かずき 作詞:森雪之丞 音楽:岡崎司 振付・ステージング:川崎悦子 演出:いのうえひでのり

出演:古田新太 天海祐希 / 石田ニコル 神尾楓珠
高田聖子 粟根まこと 森奈みはる 早乙女友貴 西垣 匠 / 生瀬勝久 ほか

【富山公演】 完売御礼 ※当日券あり
2022年9月9日(金)〜11日(日) オーバード・ホール
【新潟公演 BSN新潟放送開局70周年】 完売御礼 ※当日券あり
2022年9月22日(木)~25日(日) 新潟県民会館 大ホール
【大阪公演】 チケット発売日 2022年9月18日(日) 各種プレイガイドにて
2022年10月5日(水)~20日(木) フェスティバルホール
【東京公演】 チケット発売日 2022年9月18日(日) 各種プレイガイドにて
2022年11月1日(火)~12月6日(火) 新橋演舞場


衣装協力(天海さん)
ドレス/divka 03-5468-2118
イヤリング/Donatella Pellini 03-3274-8248
バングル/Pellini 03-3274-8248
 
撮影/田上浩一
ヘア&メイク/田中菜月(古田さん)、林智子(天海さん)
スタイリスト/渡邉圭祐(古田さん)、えなみ眞理子(天海さん)
取材・文/前田美保
 

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