転倒を起こす要因はさまざま!


山田先生の『最高の老後』の中には転倒の原因が紹介されていて、加齢による筋力の低下や病気とは関係のないものが意外に多くあります。私が気になった項目はこちら。

・バランス障害 
いつも同じ姿勢をとっている、姿勢の悪さで左右のバランスが乱れている。足の裏の状態とも関係する

・視力の低下
老眼、鳥目、近親、乱視、緑内障、白内障など
(適切な眼鏡や手術で視力を拡幅すれば転倒のリスクを減らせる)

・薬剤
睡眠剤や安定剤の飲みすぎ

・自宅環境
段差や暗闇などによるつまずき

・足の状態
爪切り、水虫、炎症、外反母趾、変形など歩行を妨げる痛み

・靴
足に合わない、足の左右差に合わせて調整していない。ヒール、厚底、スリッパなど滑りやすいもの

・飲酒
飲み過ぎによるふらつき

(『最高の老後「死ぬまで元気」を実現する5つのM』より一部引用)

こうしてみると、実は転倒を防ぐためにやれることはいっぱいあるのです。

 

転ばないために足のケアが意外に大事


山田先生は「足のケアが見逃されている」と指摘します。

「私は外来で、必ず患者さんに必ず靴と靴下を脱いでもらって状態をチェックしています。実際、足の問題が転倒につながっていることは多々。女性はきれいにケアされている方が多い印象ですが、男性の一人暮らしの方は爪が伸びっぱなし、足の関節の変形、カビの感染など、気が回らず放置していらっしゃる方もいます。糖尿病を患っていると、足の感覚が弱くなり、傷や炎症に気が付きにくくなることも。足をしっかり観察し、ケアをすることは転倒を防ぎます。アメリカでは「ポダイアトリー」と呼ばれる足の専門家がいて、その介入で転倒リスクが減ったという研究報告があるのです」

また私の父の話になりますが、父は80歳のとき外反母趾の手術を勝手に決めて入院しました。寝耳に水だった私は、「今更なんで? 女子かっ!?」と困惑したのです。それを山田先生に話したところ……。

「それはまさに『エイジズム(年齢差別)』が背景にあったかもしれませんね。年だから、今さら、といった理由で、ご本人が望む必要な治療を受けられないのは残念です。年齢に関係なく、ご本人が困っていることと向き合う姿勢が、ご家族にも必要だと考えます」

確かにそうでした。手術をした結果、父はその後、10年間は快適に歩くことができ、90歳で足の指の付け根が痛む「ハンマートウ」の手術も受けました。お陰で最後まで自分自身の足で歩ける人生でした。

もし転びやすいと悩んでいるご両親がいた場合、観察するポイントはあるのでしょうか?

「簡単なのは履物です。スリッパやサンダルは脱ぎやすく履きやすいですが、滑って転びやすい。出かけるときには安定したスニーカーを履くように促すだけでもいいです。また足の痛みを訴える場合には、足を見てあげて変形などに気が付いたら整形系外科、水虫や炎症などのちょっとした問題であれば、かかりつけ医に相談するようにすすめてみてください」