『Zola ゾラ』© 2021 Bird of Paradise. All Rights Reserved

148を数えるTwitter投稿を原作に、注目の女優と女性監督を揃えて、『ミッドサマー』らを代表作に持つスタジオA24が映画化した『Zola ゾラ』。感度の高いリアルストーリーは常に危なげで、「友だち格差」の現実にじわじわと切り込んでいく怖さもある。刺激が欲しい方にオススメの今どき感満載の映画です。

 

拡散されたリアル・ストーリーを映画化


アメリカ生まれの映画『Zola ゾラ』は冒頭から主人公のゾラが「私とこの子の話、聞きたい?」と、もったいぶってきます。好奇心もくすぐられます。乗っかったら、次々とスクロールしていきたくなるような感覚を覚える展開です。

『Zola ゾラ』© 2021 Bird of Paradise. All Rights Reserved

それもそのはず。デトロイトに住む一般女性で、職業ストリッパーのアザイア“ゾラ”キングが自らの実体験をTwitterに投稿した148を数える“つぶやき”から生まれたリアル・ストーリーなのです。投稿された2015年当時、それは瞬く間に拡散され、ネット上では「ストリッパー・サーガ」と呼ばれたそう。ただし、単なる淫らでヤバい話だけに終わらなかったから「サーガ(=叙事詩)」と称されるほど神格化され、『ミッドサマー』ら若者の感性をくすぐる作品が得意なスタジオA24によって、こうして映画化されるに至るわけです。

映画『Zola ゾラ』のテーマは率直に言うと、友達間で差を持ち合わせた「女の友だち格差」の現実です。育った環境なのか、人種の違いなのか、埋められない溝があることに気づかされる瞬間の“あるある”が描かれています。

『Zola ゾラ』© 2021 Bird of Paradise. All Rights Reserved

ゾラが格差を感じた彼女は、自分と同じ職業のストリップダンサーのステファニです。ある日、2人は出会い、導かれるままフロリダ州タンパ行きの旅に誘われ、はじめはまるで恋に落ちたように高揚感に満ちています。意気投合してしまう相手に対して「友だちになれそう!」と思うことも、そもそもあるある。

タンパで手っ取り早く大金を稼ごうと思ったゾラでしたが、とんでもない目に遭う48時間が始まります。友だちステファニとの格差も広がっていきます。ゾラは黒人女性、ステファニは白人女性という見た目による違いではなく、荷物の大きさだったり、人間関係の築き方だったり、違いの感じ方は意外と見えにくいところに潜んでいるから厄介です。