キャストもスタッフも感度の高い女性クルーがけん引
ゾラの視点を巧みに映像化したのは、人気ブランドmiu miuの女性監督シリーズに抜擢される経験なども持ち、注目を集める気鋭の黒人女性監督ジャニクサ・ブラヴォーの手腕によるものも大きいのです。
「面白くて、変わっていて、嫌な感じもするんです」と語るブラヴォーの言葉からも元のツイートストーリーの真意を捉えていることがわかります。さらに、ブラヴォーはカーディ・Bの『ボーダック・イエロー』とデヴィッド・リンチの『ブルーベルベット』(1986)の「交差点にように感じた」とも明かし、これらの直観力を16ミリフィルムに拘りながら、まさに作品に落とし込んでいます。
700人の主役候補の中からブラヴォーが選んだゾラ役のテイラー・ペイジは、この作品をきっかけにスターダムにのし上がったことも裏付けます。ステファニを演じたエルヴィス・プレスリーの孫としても知られる人気女優のライリー・キーオの才能を目の当たりにできる作品であることも確かです。
またジェーン・カンピオン監督作『パワー・オブ・ザ・ドッグ』でアカデミー賞撮影賞にノミネートされた撮影監督のアリ・ウェグナーや、ロンドンを拠点として活躍するアーティスト“ミカチュー”ことミカ・レヴィが劇伴として参加していることにも注目です。
キャストもスタッフも感度の高い女性クルーがけん引したことで、「女の友だち格差」をあくまでも湿っぽくなく、絶妙に表現できたのかもしれません。
劇中で流れるUSHER、MIGOS、2 CHAINZなどのラップミュージックも刺激的なストーリーを盛り上げます。全米公開後、人気ラッパーのカニエ・ウェストは本作を二回も見て、劇伴のミックスを発表したとか。カニエほどの行動に移せなくとも、視覚からも聴覚からも受ける刺激から、ゾラの経験の生々しさを理屈抜きに感じ取ることはできそうです。
<作品紹介>
『Zola ゾラ』
監督:ジャニクサ・ブラヴォー「アトランタ」
撮影:アリ・ウェグナー『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
音楽:ミカ・レヴィ(ミカチュー)『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』
出演:テイラー・ペイジ『マ・レイニーのブラックボトム』、ライリー・キーオ『マッドマックス 怒りのデス・ロード』ほか
2021年/アメリカ/英語/86分/ビスタ/カラー/5.1ch/原題:Zola/ R18+/日本語字幕:石田泰子/配給:トランスフォーマー © 2021 Bird of Paradise. All Rights Reserved
公式 HP:https://transformer.co.jp/m/zola/
公式 Twitter:@Zola_movie
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構成/山崎 恵
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